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うま味について【アミノ酸系・核酸系・有機酸系】

うま味とは5つの基本味の一つで肉、魚、野菜、キノコ、チーズ、味噌、醤油など多くの食品に含まれる味です。日本では古来から“うま味”とは知らずとも昆布やカツオの出汁として料理に利用してきました。

“旨味”と“うま味”の違い

そもそも“旨味”“うま味”では意味が異なります。“旨味”の場合、美味しさ全般を表す広い意味での旨さを表しますが、“うま味”の場合は、舌にある味蕾(みらい)の受容体で感じとることができる味で、5つの基本味の一つを示します。

うま味の受容体

この受容体というのがポイントで、受容体を持っている甘味、酸味、塩味、苦味、うま味は基本味に含まれますが、受容体で感じるわけではない辛味や渋味などは基本味には含まれません。辛味は痛覚の一種で、渋味は収斂(しゅうれん)作用によるものです。

うま味の受容体は味蕾だけでなく胃や腸などの上皮細胞にも見つかっており、うま味受容体への刺激が消化吸収に関わる生理機能や体内代謝に影響を与える可能性があるとされています。

うま味の歴史

1908年 池田菊苗博士(東京帝国大学)が昆布からグルタミン酸を抽出し、うま味と命名
1913年 池田博士の高弟・小玉新太郎がイノシル酸を発見
1957年 國中明(ヤマサ醤油)がグアニル酸がうま味物質であることを発見
1985年 第一回うま味国際シンポジウム。英語でUmamiが広まる
2000年 味蕾にグルタミン酸受容体が発見される

種類と分類

うま味はアミノ酸系・核酸系・有機酸系の3種類に分類できます。

  • アミノ酸系:L-グルタミン酸、L-アスパラギン酸、トリコロミン酸,イボテン酸など
  • 核酸系:5′-イノシン酸、5′-グアニル酸、5′-キサンチル酸など
  • 有機酸系:コハク酸など

※多くのうま味成分はグルタミン酸ナトリウムや、イノシン酸ヒスチジンなどのように塩で存在していることも多いですが塩は省略しています。

うま味の相乗効果

アミノ酸系うま味成分と核酸系のうま味成分を組み合わせると、うま味の強さが著しく上昇し数倍に増加します。うま味の相乗効果を利用した料理は世界中にあり、複数の食材を使うと美味しさが増幅することを人間は経験で理解していたことが分かります。

〈合わせ出汁〉
カツオと昆布 イノシン酸とグルタミン酸
シイタケと昆布 グアニル酸とグルタミン酸
〈ブイヨン〉
肉と玉ねぎ、にんじん イノシン酸とグルタミン酸
〈鶏がらスープ〉
鶏がらとネギ、ショウガ イノシン酸とグルタミン酸

とはいえ日本と海外では異なる点もあります。出汁はうま味を抽出したもので、他の基本味は薄めであるのに対し、ブイヨンはうま味を含めた基本味すべてを抽出します。また、西洋などでは水の硬度が高いためうま味を抽出しくいという違いもあります。

アミノ酸系・核酸系・有機酸系の特徴

アミノ酸系

L-グルタミン酸は昆布、トマト、チーズ、緑茶、母乳などに含まれます。グルタミン酸はD型とL型の2種類の異性体が存在し、L-グルタミン酸だけがうま味を呈します。また、グルタミン酸自体が神経伝達物質でもあり、同じく神経伝達物質でリラックス効果があるなどと言われているGABAの材料にもなります。

GABA:γ-アミノ酪酸(Gamma-AminoButyric Acid)の頭文字をとった略称である。抑制性の神経伝達物質で、血圧上昇抑制作用、利尿作用、リラックス効果などがあるとされる。グルタミン酸を脱炭酸化することで生成される。抑制性のGABAに対してグルタミン酸は興奮性の神経伝達物質である。

L-アスパラギン酸は牛肉、豆類、アスパラガス、サトウキビ、昆布などに含まれます。アスパラギン酸はD型とL型の2種類の異性体が存在し、グルタミン酸と同様にL型だけがうま味を呈します。グルタミン酸と同じ興奮性神経伝達物質でもあります。

また、グルタミン酸アスパラギン酸はナトリウム塩でない場合、うま味のほかに酸味なども呈します。基本的にアミノ酸は味を呈するものが多くL型は苦み、D型は甘みを呈するものが多い傾向があります。

トリコロミン酸はハエトリシメジというキノコに含まれています。イボテン酸はハエトリシメジやイボテングタケ、ベニテングダケなどに含まれています。イボテン酸はグルタミン酸に比べて10倍の呈味力を持っていますが毒でもあるため、摂取すると精神興奮と精神抑制を同時に起こす複雑な症状を起こします。

核酸系

核酸はDNAやRNAのことで、それらはヌクレオチドの重合体により構成されています。そのヌクレオチドの中にはうま味を呈するものもあり、それらを呈味性ヌクレオチドと呼びます。核酸に含まれているため核酸系うま味成分と呼ばれることもあります。

以下に核酸に含まれる主なヌクレオチドの一覧を示します。

ヌクレオチドの中でもうま味を呈するのは一部であり、具体的にはグアニル酸やイノシン酸、キサンチル酸です。うま味の強さはグアニル酸が最も強く、グアニル酸→イノシン酸→キサンチル酸の順で弱くなります。これらは以下に示す“呈味性を持つための3つの条件”を満たしているため、うま味を呈します。

  • 核酸塩基がプリン骨格を持つ
  • プリンの6位の炭素に-OH基を有する
  • リボースの5′位にリン酸が結合している

上記の3条件の一つ目「核酸塩基がプリン骨格を持つ」というのは、要するに「プリン体であること」という意味です。つまりヌクレオチドがうま味を持つためにはプリン体である必要があります。プリン体を含む食べ物は美味しいものが多いですが、うま味が豊富というのもその理由の一つです。

グアニル酸はシイタケに含まれると言われますが、正確には“干し”シイタケの“戻し汁”に含まれます。戻し汁を加熱することでRNA分解酵素と脱リン酸化酵素が働き、他のヌクレオチドがグアニル酸に変化します。うま味成分のグアニル酸は正確には5′-グアニル酸で、グアノシン5′-リン酸とも表記します。2′-グアニル酸や3′-グアニル酸も存在しますが、5′-グアニル酸だけがうま味を呈します。呈味性の3条件の一つ“リボースの5′位にリン酸が結合している”を満たすには5′位である必要があります。

イノシン酸は肉、魚、特にカツオ節に含まれます。動物の筋肉にはアデニル酸(AMP)やアデノシン3リン酸(ATP)が多く含まれており、死後、酵素が働くことによりATPがAMPになりAMPが脱アミノ化することでイノシン酸が生成されます。肉や魚はこのように熟成されますが、さらに分解が進みイノシン酸がイノシンやヒポキサンチンになると味が落ち腐っていきます。うま味成分のイノシン酸は正確には5′-イノシン酸で、イノシン5′-リン酸とも表記します。

有機酸系

コハク酸コハク酸ナトリウムとして貝類に含まれます。他に身近な食品に含まれており味を呈す有機酸は、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸などいくつかありますが、その中でもうま味を呈すのがコハク酸です。しかし、うま味だけでなく苦味や酸味も呈し、他のうま味成分と相乗効果が無いことなどから調味料としてはあまりメジャーではありません。ただ、がん細胞抑制作用や脂肪燃焼効果を有する可能性があり、健康への働きをする成分として期待されています。

コハク酸:クエン酸回路の中間代謝物で、スクシニルCoAとフマル酸の間に位置する。16世紀に琥珀を乾留することで発見されたためこの名が付いた。

プリン体と尿酸

プリン体

プリン体とは以下のようなプリン骨格をもった物質のことです。

図1 プリン(プリン環、プリン骨格)
ちなみに、プリン体(purine)の語源はラテン語で“純粋な尿酸”という意味のpurum uricumであり、菓子の方のプリン(pudding)とは全く関係がない。

プリン体は核酸塩基ヌクレオチドアルカロイドとして存在しており、それらはプリンの名を冠して呼ばれます。

核酸:リボ核酸(RNA)とデオキシリボ核酸(DNA)など。ヌクレオチドによって構成される。
ヌクレオチド:ヌクレオシド(塩基と糖)にリン酸が結合した物質。
ヌクレオシド:塩基と糖が結合した物質。
核酸塩基:核酸を構成する塩基。DNAとRNAを構成する5種類の塩基はプリン塩基(アデニン、グアニン)とピリミジン塩基(チミン、シトシン、ウラシル)に分けられる。他にも修飾塩基などがあり、ヒト以外も含めると100種類以上存在する。
アルカロイド:窒素を含む天然由来の有機化合物のこと。塩基性や毒性を持つことが多い物質だが明確な定義は無い。語源はalkali(アルカリ)から来ている。カフェイン、テオブロミン、ニコチン、コカイン、モルヒネ、ソラニンなど。

プリン体の例

  • プリン塩基:核酸塩基の内、プリン骨格を含むもの。

例:アデニン、グアニン、キサンチン、ヒポキサンチンなど

  • プリンヌクレオチド:ヌクレオチドの内、プリン骨格を含むもの。

例:イノシン酸、グアニル酸、ATP、NAD、FADなど

  • プリンアルカロイド:アルカロイドの内、プリン骨格を含むもの。

例:カフェイン、テオブロミン,テオフィリン,カイネチン,ゼアチンなど

アデニン
カフェイン
ATP
グアニン
テオブロミン
グアニル酸
イノシン酸:イノシンモノリン酸(IMP)とも。呈味性ヌクレオチド。
グアニル酸:グアノシンモノリン酸(GMP)とも。呈味性ヌクレオチド。
ATP:アデノシン三リン酸。生体内エネルギー通貨とも称されエネルギーの貯蔵・放出を行うヌクレオチド。
NAD:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド。脱水素酵素の補酵素。ビタミンB3から作られる。NAD+とNADHの2つの状態を取る。
FAD:フラビンアデニンジヌクレオチド。酸化還元酵素の補酵素。ビタミンB2から作られる。FADとFADH2の2つの状態を取る。

プリン体と旨味成分

プリン塩基であるグアニンヒポキサンチンのヌクレオチドであるグアニル酸イノシン酸は旨味成分としても有名で、呈味性(ていみせい)ヌクレオチド核酸系旨味成分などとも呼ばれます。

プリン代謝の経路

ヌクレオチドの合成はアミノ酸から新たに合成するデノボ合成(新生経路)と食事や核酸の分解によってできた塩基などを利用して再合成するサルベージ経路の2種類に分けられます。

分解の際はピリミジンヌクレオチドがアンモニアと二酸化炭素まで分解されるのに対し、プリンヌクレオチドは尿酸までしか分解されません。プリンヌクレオチドであるAMPGMPは以下の経路で分解されます。

カフェインの代謝にはいくつかの経路がありますが、脱メチル化と酸化を受けてパラキサンチンやメチル尿酸に分解され尿中に排泄されます。

尿酸

尿酸(図2)とはプリン体を酸化してできる最終生成物です。ぱっと見たところ構造があまり変わっていない気もしますが、よく見ると酸素が結合しており酸化されていることが分かります。

図2 尿酸

尿酸は悪いもののイメージが強いですが、実はビタミンCよりも強い抗酸化力を持つ重要な抗酸化物質です。そのため体内には一定の尿酸が蓄積しており、これを尿酸プールといいます。かなり個人差が大きいですが、約1200mgが血中等に蓄積されています。一日の尿酸の生合成量と排出量はほとんど同じ(700mg前後)で、約60%が入れ替わると言われています。

また、尿酸は腎臓から尿での排出だけでなく、腸管からも排出されますが詳しいメカニズムは分かっていません。約500mg/日が腎臓、約200mg/日が腸管から排出されています。

尿酸は水に難溶性のため尿での排出が限られているため、産生量が増えると血中の尿酸量が増加します。そのため尿酸値が高くなると過剰量が関節や末端などの体温の低い部分であふれ、結晶を作り痛風を発症することがあります。

参考文献

松下啓ほか. 血清尿酸値と内臓脂肪蓄積との関連. 人間ドック. 2009, 24 (1), p.44-49, 公益社団法人 日本人間ドック学会.

痛風になる6つの原因

痛風は体内で過剰になった尿酸が尿酸ナトリウムという針状結晶として関節等に現れ、白血球が結晶を異物と判断して攻撃し炎症を起こすため発生しますが、原因を大きく6つに分けると以下のようになります。

  1. 体質
  2. プリン体の大量摂取
  3. 飲酒
  4. 肥満
  5. 水分不足
  6. ストレス

1.体質

体質と言われてもどうしようもない話ですが、残念ながら痛風の原因の7~8割は体質で、残り2~3割が生活習慣によるものです。尿酸値が高くなる高尿酸血症は以下の4種類に分類されそれにより治療法や治療薬が選択されます。

  • 尿酸産生過剰型(肝臓で尿酸が過剰に作られるタイプ)
  • 尿酸排泄低下型(腎臓で尿酸が排泄されにくいタイプ)
  • 混合型(尿酸産生過剰型+尿酸排泄低下型)
  • 腎外性排泄低下型(消化管等から尿酸が排泄されにくいタイプ)
痛風発症者の90%以上が男性であり、これほど男女差がある疾患はとても珍しい。原因としては、女性は女性ホルモンによって腎臓による尿酸の排出を促され、そもそもの平常時の尿酸値が低く保たれることにある。

1.プリン体の大量摂取

尿酸はプリン体が分解されてできる物質のため、プリン体を大量に摂取すると痛風の原因になります。日本痛風・尿酸核酸学会によると1日のプリン体摂取量は400mgが一つの目安になっています。以下の通り、肉や魚に多く含まれていますが、卵や乳製品にはほとんど含まれていません。

  • 牛、豚、鶏、魚介 100~200mg /100g
  • 鶏卵、うずら卵  0mg /100g
  • 牛乳       0mg /100g
  • ビール      25mg /500ml

2.飲酒

酒類にはそこまで多くのプリン体は含まれていませんが、実は尿酸値が高まりやすい仕組みを持っています。まず、アルコールを摂取するとアルコールの代謝のために、ATPが消費され分解されます。その際に通常は再合成されATPに戻りますが、大量にATPが分解され、再合成が間に合わない場合はさらに分解され、尿酸になります。また、アルコールは乳酸を増やす作用もあるため、乳酸が尿酸の排出を妨害し、血中の尿酸値が高まります。

ATP(adenosine triphosphate):アデノシン三リン酸。生体内エネルギー通貨とも称されエネルギーの貯蔵・放出を行う。リン酸×3と糖とアデニン(プリン塩基)で構成されたヌクレオチド。
ヌクレオチド:ヌクレオシド(塩基と糖)にリン酸が結合した物質。DNAやRNAなどを構成する。
ヌクレオシド:塩基と糖が結合した物質。

3.肥満

肥満の人ほど尿酸値が高く痛風の人が多いというデータがありますが、それは単純に食事量が多いというだけでなく、2つの理由があります。

1つ目は、内臓脂肪が尿酸の生産を促すためです。内容が専門的なので割愛し流れだけ簡単に以下に示します。

内臓脂肪から遊離脂肪酸放出 → 肝臓に流入 → 脂肪酸合成の促進 → ペントースリン酸経路の活性化 → デノボ合成でプリン体が増加 → 尿酸の増加

2つ目は、肥満の人はインスリン抵抗性を持つことが多く、インスリンが過剰に分泌されるため、腎臓でナトリウムが再吸収されやすくなり、それと共輸送される尿酸も再吸収され尿酸値が高くなりやすいという理由です。

4.水分不足

水分摂取量が少なかったり、運動で汗をかいたりすると血液中の水分量が減少し、尿酸の濃度が高まり尿酸値が高まります。体重や活動量にもよりますが、水分不足にならないように食事を含め一日に2000ml以上の水分を摂取することが望ましいです。

5.心理的ストレス

過度な心理的ストレスは人の体に多大な影響を与え、痛風だけでなく様々な病気の原因となります。複雑ゆえに詳しいメカニズムは分かっていませんが、体内のアドレナリンやエストロゲンなどのホルモン量が変化し、尿酸の産生促進あるいは排出低下によって尿酸値が高まると考えられます。

参考文献

松下啓ほか. 血清尿酸値と内臓脂肪蓄積との関連. 人間ドック. 2009, 24 (1), p.44-49, 公益社団法人 日本人間ドック学会.

セカンドミール効果とは【血糖値と消化管ホルモン】

概要

セカンドミールとは「2度目の食事」のことで、朝食に対する「昼食」や、昼食に対する「夕食」のことを指します。あるいは、朝食をファーストミール、昼食をセカンドミール、夕食をサードミールと呼ぶ場合もあります。

セカンドミール効果とは、ファーストミールに食物繊維を摂取するとセカンドミールやサードミールにおいて血糖値の上昇が穏やかになる効果のことです。

セカンドミール効果は以下の論文によってDr. David Jenkinsらにより発表されました。

David J. Jenkins et al. (1982). “Slow release dietary carbohydrate improves second meal tolerance,” American Journal of Clinical Nutrition, Vol. 35, No. 6, pp. 1339-1346.

Dr. JenkinsはGI値(グリセミックインデックス)の提唱者としても知られています。GI値とGL値については以下で解説しています。

セカンドミール効果のメカニズム

セカンドミール効果のメカニズムは以下の2種類に分けられます。

  1. いわゆる“ベジファースト”と呼ばれる野菜を最初に食べる行為と同じ原理によるもの
  2. 食物繊維により腸内細菌が消化管ホルモンを分泌することによるもの

1つ目のベジファーストは野菜を最初に食べることで野菜に含まれる食物繊維によって、炭水化物等を物理的に阻み消化吸収を穏やかにし、血糖値の上昇を抑える効果です。この効果が1回の食事だけでなく、セカンドミールにも影響があることが分かったということです。

2つ目がセカンドミール効果の主な作用であり、1つ目を物理的効果とするなら2つ目はより化学的な効果と言えるかもしれません。

食物繊維は消化吸収されないため大腸まで届き、腸内細菌により分解され腸内細菌のエネルギー源となっています。腸内細菌は食物繊維を分解すると短鎖脂肪酸を生成します。短鎖脂肪酸は大腸上皮細胞のエネルギー源でもありますが、大腸上皮に存在する胃腸内分泌細胞の受容体にも作用し、消化管ホルモングルカゴン様ペプチドGLP-1)を分泌します。GLP-1は膵臓のランゲルハンス島のβ細胞に作用し、β細胞がインスリンを分泌し、血糖値を下げます。

あらかじめファーストミールに食物繊維を摂ることで、セカンドミールやサードミールの時にインスリンを働かせることができ、血糖値の上昇を抑えることができます。これがセカンドミール効果の2つ目の原理です。

胃腸内分泌細胞:胃、腸、膵臓などの消化器系に存在し、消化管ホルモンを分泌する。K細胞、M細胞、L細胞など多数の細胞型が存在する。G細胞はガストリン、S細胞はセクレチンのように対応しており、細胞型により分泌するホルモンが異なる。
消化管ホルモン:三大消化管ホルモンのガストリン、セクレチン、コレシストキニン-パンクレオザイミン(CCK-PZ)や、GLP-1、GLP-2など多数存在する。すべてペプチドホルモン。
GLP-1(Glucagon-like peptide-1):グルカゴン様ペプチド-1。L細胞が分泌する消化管ホルモン。GIP(→K細胞)と共にインクレチンとも呼ばれる。糖尿病治療薬の成分でもある。
ランゲルハンス島:膵臓に存在する島状の細胞群。α細胞、β細胞、δ細胞、ε細胞、PP細胞の5つの内分泌細胞が存在し、α細胞がグルカゴンを分泌、β細胞がインスリンを分泌する。
インスリン:膵臓で生成されるペプチドホルモン。血中のブドウ糖の、肝臓や脂肪細胞、筋細胞への取り込みを促し血糖値を下げる。インスリン濃度が高い時は体内で同化(アナボリック)が促進する。
グルカゴン:インスリンを分泌するβ細胞に隣接するα細胞から分泌されインスリンとは逆の働きをする。肝臓でのグリコーゲンの分解を促し血糖値を上げる。グルカゴンの分泌は異化(カタボリック)を促進する。

血糖値上昇による悪影響

血糖値の急上昇や高血糖によるリスクは以下のものがあります。

  • 動脈硬化による心臓病や脳卒中
  • 糖尿病や隠れ糖尿病
  • 糖尿病の合併症による神経症・網膜症・腎症

血糖値の急激な上昇は活性酸素を発生させ血管を酸化させるため、動脈硬化のリスクが高まります。

糖尿病かどうかは血糖値の測定によって判断しますが、血糖値にもいくつか種類があります。普通の健康診断では空腹時血糖値を計測し、126mg/dl以上だと糖尿病の可能性が高いと判断されます。

隠れ糖尿病は食後高血糖のことで、食事の2時間後に測る食後血糖値が140mg/dl以上だと食後高血糖と判断されます。空腹時血糖値が正常でも食後高血糖であれば、糖尿病と同様に血管が傷つくリスクが高まります。

糖尿病でさらに怖いのは合併症で、神経症・網膜症・腎症等を発症するリスクがあります。原因はやはり血管で、血管が傷つくことで酸素や栄養が各組織に届かなくなり、特に毛細血管や細かい血管が重要な働きをしている網膜や腎臓、神経などで障害を起こします。これらは自覚症状が出にくいため定期健診などでの早期発見が重要です。

以上のようなリスクを抑えるためにもセカンドミール効果を利用することをお勧めします。

乳酸の効果と乳酸の語源

乳酸は筋肉で糖を代謝した時に発生する物質で、疲労の原因物質であると誤解されていた時期もありました。その乳酸について解説します。

乳酸の語源

乳酸はスウェーデンの化学者カール・ヴィルヘルム・シェーレが発見しました。彼は他にも酸素などの元素や有機酸、無機酸を発見したことでも有名です。シェーレは発酵した牛乳の中から一つの酸を単離し、Mjölksyra(スウェーデン語で乳酸)と名付けました。その後英語でlactic acid(乳酸)という慣用名で広く用いられるようになりました。つまり、乳酸の語源は牛乳です。

乳酸が疲労物質であるという誤り

乳酸は疲労物質ではありません。この情報は様々なメディアなどで広まってから久しいため、知っている人も多いと思いますが、もう一度解説します。

昔は乳酸と言えば疲労の代表的な物質のイメージがありましたが、実際はむしろ筋疲労を抑制する効果があることが分かっています。

まず筋疲労の原因は、何か一つに起因するわけではなく、複数の要因が重なって起きます。あえて挙げるとすれば次の4つです。

  • グリコーゲンの枯渇
  • カルシウムイオン濃度の低下
  • 活動電位の減退
  • 酸性化(アシドーシス)

詳しくは以下の記事をご参照ください。

さて、乳酸は筋疲労の直接の原因ではないわけですが、なぜ誤解が生まれたかというと、筋肉の疲労度合いと血中乳酸濃度にきれいな相関関係があったためです。

しかし、実際のところ相関関係があったのは乳酸から発生する水素イオンでした。乳酸は水溶液中で水素イオンを発生するため、酸性化アシドーシス)が起こり、筋疲労が起こると考えられます。アシドーシスを含め上記の4種類が筋疲労の原因である可能性があります。

あくまで一つの要因としてですが、疲労と乳酸の相関関係により反対派の意見は受け入れられず長らく乳酸にはネガティブなイメージが付いていました。

乳酸の効果

乳酸にはカリウムイオンが細胞外に漏出するのを防ぎ、筋疲労を抑制する効果があります1)

まず、筋肉は活動電位がなければ働かないわけですが、活動電位はイオンの偏りがあることで生まれます。具体的には細胞膜内にカリウムイオンが、細胞膜外にナトリウムイオンが偏在していますが、筋肉の収縮を繰り返すとカリウムイオンが漏れ出し活動電位が発生しにくくなります。

その際に乳酸がカリウムイオンの漏出を防ぎ、活動電位の減退を抑制し、筋疲労を抑制します。

乳酸について詳しく

ヒトの筋肉において使われるエネルギーの生産経路は大きくATP-CP系解糖系クエン酸回路の3種類に分けられますが、乳酸は解糖系の代謝によって生成されます。

ATP(adenosine triphosphate):アデノシン三リン酸。生体内エネルギー通貨とも称されエネルギーの貯蔵・放出を行う。エネルギーはリン酸結合に存在しておりリン酸を分離することでエネルギーを放出する。
CP (phospho creatine):クレアチンリン酸。脳細胞や筋細胞など大量にエネルギーを消費する細胞のエネルギー貯蔵物質であり、ATP濃度を調整する緩衝材でもある。ATPがなくなると直ちにリン酸を放出しATPを再合成できるため、筋肉において瞬発的で高強度な運動において使用されるが、エネルギー持続時間は8秒程度と短い。

解糖系はその名の通り糖を代謝しATP(エネルギー)を作り出し、ピルビン酸まで分解されます。ピルビン酸はその後、クエン酸回路にて分解されATPを生産します。しかし、高強度な運動などで糖の消費が増えると、ピルビン酸が増えクエン酸回路で処理できない分は一旦乳酸に還元されます。

乳酸への還元にはNADHの酸化が対応しており、乳酸を生成することで、NAD+を生成することができます。NAD+は解糖系の代謝においても必要な補酵素であり、通常は代謝速度の遅いクエン酸回路でも生成されますが、糖の消費が激しい時は生成が追い付かないため、ピルビン酸を乳酸に還元することで補います。高強度な運動が終わりクエン酸回路が優位になれば、今度は乳酸がピルビン酸に酸化され、20~25%がクエン酸回路で分解されATPを作り、残りはグリコーゲンに再合成されます。

NAD+ (nicotinamide adenine dinucleotide):ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド。脱水素酵素の補酵素。水素受容体。ビタミンB3のナイアシンから合成される。コエンザイムⅠ(CoⅠ)。補酵素Ⅰとも言い、リン酸が結合したNADP+は補酵素Ⅱ。NAD+の“+”はピリジン環の窒素が持つ電荷を表す。
NADH:同じくニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを指すが、酸化型であるNAD+を還元した、還元型である。水素原子と電子1個を受容している。

ここで酸素の有無で考えると、解糖系嫌気的(無酸素的)でクエン酸回路好気的(有酸素的)な経路です。よく教科書などでは酸素の供給が不足すると乳酸の生成が高まると書いてありますが、実際は酸素の多寡による影響は少なく、単純に糖の分解が進んだ時に乳酸の生成は高まります。つまり糖の分解が進む激しい無酸素運動をした時に乳酸の生成が高まるというただそれだけのことです。

ちなみに無酸素運動というのは無酸素的な代謝経路から得られるエネルギーを用いた運動のことであり、無酸素運動中も体内では心臓と血液により体中に酸素が送られており酸素がなくなることはありません(当たり前ですが)。何が言いたいのかというと、最終的に酸素が無ければ乳酸は分解できませんが、酸素があったとしても乳酸は生成されるということです。

参考文献

1)Nielsen, O. B., De Paoli, F., and Overgaard, K. (2001). “Protective effects of lactic acid on force production in rat skeletal muscle,” The Journal of Physiology, 536(Pt 1). 161–166.

ビタミン13種類

ビタミンの歴史

1910年鈴木梅太郎が米ぬかから、初めてビタミンB1(チアミン)を抽出、発見しました。当時はビタミンという名前は無く別名で呼ばれていました。

1911年カシミール・フンクもビタミンB1(チアミン)を抽出、発見し、その物質がアミンの性質を持っていたため「生命のアミン」と言う意味で”ビタミン(vitamine)”と名付けました。世界的には鈴木ではなくフンクがビタミンの発見者、命名者として知られています。

1913年エルマー・ヴァーナー・マッカラムがバターと卵黄の中からビタミンAを抽出、発見しました。マッカラムはビタミンAを”油溶性A”、ビタミンB1を”水溶性B”と名付けました。

1920年ジャック・セシル・ドラモンドが柑橘類からビタミンCを抽出、発見し、”水溶性C”と名付けました。

ビタミンがアミンに限らない事が分かったため、”vitamine”のスペルから”e”を取り”vitamin”にすることを提案し、以降”vitamin”が広まりました。同時に、”油溶性A”、”水溶性B”、”水溶性C”が”ビタミンA”、”ビタミンB”、”ビタミンC”と名付けられました。

その後、ビタミンと思われる物質が発見されるごとにアルファベット順でビタミンD,E,F……と命名されていきました。(ビタミンK以外)

以下、発見年と発見者(※構造判明や、合成可能になったのは後年である)

ビタミンD:1919年エドワード・メランビー

ビタミンE:1922年ハーバート・エバンスとキャサリン・ビショップ

ビタミンK:1929年カール・ピーター・ヘンリク・ダム

これ以後ビタミン候補となる物質も数十種類発見されたが、”ビタミンの定義から外れている”、”他のビタミンと重複している”、”ビタミンの複合体となったビタミンB群に再分類される”などした結果、現在もビタミンとして認められているのは、脂溶性ビタミン4種水溶性ビタミン9種の計13種のみです。

ビタミン名成分名
水溶性ビタミンB群8種チアミン、リボフラビン、ナイアシン、パントテン酸、ピリドキシン、ビオチン、葉酸、シアノコバラミン
ビタミンCアスコルビン酸
脂溶性ビタミンAレチノール(レチノイド)
ビタミンDエルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール
ビタミンEトコフェロール、トコトリエノール
ビタミンKフィロキノン、メナキノン

ビタミンの定義

微量で体内の機能を正常に保つために必要な有機化合物で、体内で合成できないか、合成できても十分な量ではないもので、三大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質)以外のものです。

例えば、ミネラルは微量で体内で重要な働きをしますが、無機物のため当てはまりません。加えて、ビタミンFもかつてはビタミンとされていたが、分類上は三大栄養素である脂質のためビタミンではなくなりました。

また、大腸に存在する腸内細菌がビタミンB群とビタミンKを合成することが分かっていますが、それが体内の代謝において十分な働きをしているのかは分かっていません。

ビタミン様物質

ビタミンの定義から外れた物質のことです。過去にビタミンと呼ばれていましたが、多くは必須ではないことが分かり、ビタミンではなくなりました。すべて合わせれば20種類以上あると思われますが、以下に数種類だけ記します。

オロト酸(ビタミンB13)カルニチン(ビタミンBTユビキノン(ビタミンQ)などは体内で重要な働きをしますが、体内で合成できるため定義からは外れました。

リノール酸(ビタミンF)は体内で合成されませんが、そもそも脂肪酸のためビタミンではなく必須脂肪酸に分類されました。

ビタミンA

ビタミンAとは

ビタミンAとはレチノールのことですが、ビタミンAの特性を持つ物質であるビタミンA誘導体(あるいはレチノール誘導体)というものも存在します。ビタミンA誘導体とはレチノールの一部が変化したもので、レチナール、レチノイン酸、レチニルエステルトレチノインなどがあります。これらのビタミンA誘導体とビタミンAをあわせてレチノイドといいます。

レチノイドは全て、ビタミンAに近い性質を持ち、広義でのビタミンAとも言えるため、ビタミンAとして扱っている書籍等もあります。

プロビタミンAとは

さらに、似た物質としてプロビタミンAという物質も存在します。プロビタミンAとは、体内でレチノイドに変化する物質のことで、カロテノイドの一種であるカロテンとクリプトキサンチンなどがそれにあたります。

ただ、レチノイドに比べるとレチノール活性は12分の1や24分の1であるため、1mgのレチノイドと同等の効果を得るには12mgのβ-カロテンを摂取する必要があります。

レチノール1㎎に相当する各物質の量[㎎]
レチノイド1
β-カロテン(サプリ由来)2
β-カロテン(食物由来)12
α-カロテン24
クリプトキサンチン24
その他プロビタミンA24

それぞれのプロビタミンAを、レチノールに換算すると何μgなのかを表した単位をレチノール活性当量[μgRAE(Retinol Activity Equivalents)]といいます。例えば、下記製品のβカロテン含有量は1800μgですが、レチノール活性当量は150μgRAEとなります。

1800[μg] ÷ 12 = 150[μgRAE]

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プロビタミンAには、多量に摂取してもレチノイドへの変換が適切に調整されるため、過剰摂取障害が起きないというメリットがあります。

ビタミンAは網膜で光を感じる物質であるロドプシンの生成に関与しており視覚の機能を正常に保つ作用があります。そのため広義のビタミンAであるレチノイドは網膜(英:retina)が語源となっています。他にも細胞の分化に関与しており、欠乏すると夜盲症や皮膚や粘膜の角質化、子供の発育不良などを引き起こします。

過剰摂取すると肝機能障害や骨折、皮膚の荒れ等が起こる可能性があります。


ビタミンB群

ビタミンBとは

ビタミンB群は、水溶性で補酵素として働く8種類のビタミンです。

ビタミン名成分名
ビタミンB1チアミン
ビタミンB2リボフラビン
ビタミンB3ニコチン酸、ニコチン酸アミド(ナイアシン)
ビタミンB5パントテン酸
ビタミンB6ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン
ビタミンB7ビオチン
ビタミンB9葉酸
ビタミンB12シアノコバラミン

ビタミンB1

ビタミンB1とはチアミンのことで、初めて発見されたビタミンであり、日本ではアベリ酸やオリザニンと呼ばれていました。糖質、脂肪酸の代謝に補酵素として関わっており、欠乏すると脚気や神経炎が生じます。脂肪酸よりも糖質の代謝に多くのビタミンB1を消費するため、炭水化物を主なエネルギー源とする人間にとって重要な栄養素です。米の胚芽に含まれており、精白された米ばかりで副食を摂らない江戸時代などに欠乏症が多発しました。また、アルコールの分解にビタミンB1とB3が必要なためアルコール依存症の人も欠乏症になりやすいです。

過剰分は尿によって排泄されるため、過剰症の可能性はほとんどありません。

ビタミンB2

ビタミンB2とはリボフラビンのことで、3大栄養素の代謝(特に脂質に多く消費)や体全体の細胞の再生などに補酵素として関わっています。老化などの原因となる過酸化脂質を分解する働きがあります。過酸化脂質とは不飽和脂肪酸が酸化してできる脂質です。幅広い食品に含まれるため欠乏の可能性は低いですが、欠乏すると口内炎、皮膚炎、角膜炎、成長障害などを起こします。

過剰分は尿によって排泄されるため、過剰症の可能性はほとんどありません。

また、黄色い着色料として使用されることもあります。よくある誤解として、摂取後に尿が黄色くなるのはビタミンCではなくビタミンB2の影響です。

ビタミンB3(ナイアシン)

ナイアシンの歴史

ナイアシンとは、もともとニコチン酸ニコチン酸アミドのことで、ビタミンになる前から知られていました。ビタミンになった後改名されナイアシンと呼ばれるようになりました。

Niacin(ナイアシン)という名前は、NIcotinic ACid vitamIN(ニコチン酸ビタミン)に由来しています。消費者が、ニコチン酸アミドをタバコに含まれるニコチンと混同する恐れがあるため、米国医学研究所※(Institute of Medicine;IoM)の食品栄養委員会(Food and Nutrition Board;FNB)が新しくナイアシンという名前を付けたという経緯があります。

※現在の全米医学アカデミー(National Academy of Medicine;NAM)

ナイアシンは既に知られていた化合物がビタミンとして認められた唯一の例です。ペラグラという病気がナイアシンの欠乏によることが分かり、ナイアシンがビタミンであることが分かりました。

ナイアシンの機能

ナイアシンはアミノ酸であるトリプトファンからも合成されるためタンパク質からも補給できます。

ナイアシンは体内でNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)という補酵素に変化し、体内で働きます。主に糖質や脂質の代謝に補酵素として関わります。他にもホルモンの合成や細胞の分裂、DNAの修復、アセトアルデヒドの分解など様々な働きをします。アセトアルデヒドはアルコールの代謝によりできる物質で、頭痛や吐き気の原因となります。アルコールを大量に摂取するとビタミンB3とB1を大量に消費するため欠乏の恐れもあります。

過剰摂取は下痢や便秘、肝機能障害を起こす可能性があります。

サプリなどで摂取すると、人によっては皮膚の赤みや痒みが発生するナイアシンフラッシュが起こる可能性がありますが、一過性のものであり特に危険性はありません。

ビタミンB5(パントテン酸)

パントテン酸は食品中ではコエンザイムA(CoA)という補酵素として存在しており、体内でパントテン酸に分解されたあと再びCoAに戻り様々な代謝の補酵素として働きます。

そもそもコエンザイム(coenzyme)は英語で補酵素という意味であり、コエンザイムAは補酵素Aという意味です。CoAはアセチル化に関わる補酵素であるためアセチル化(Acetylation)の頭文字をとってcoenzyme Aと名付けられました。

CoAは三大栄養素の代謝やHDLコレステロールの合成、副腎皮質ホルモンの合成などの補酵素として働きます。欠乏すると、副腎障害や神経障害が起こる可能性があります。しかし、パントテン酸はギリシャ語で“どこにでもある酸”という意味のとおり、様々な食物に含まれているため、欠乏することはまれです。

過剰症の可能性はほとんどありません。

ビタミンB6

ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンの三種類が存在します。主にアミノ酸やタンパク質の代謝に関わり、タンパク質の分解と合成や、アミノ酸を構成物質とする神経伝達物質の合成の補酵素として働きます。他にも脂質の代謝や赤血球の合成、ホルモンの作用に関わっています。欠乏すると神経障害や皮膚炎を引き起こします。

過剰摂取は神経障害を起こす可能性があります。

ビタミンB7(ビオチン)

腸内細菌によっても合成されますが、それだけでは十分でないとされています。ビオチンは三大栄養素の代謝に補酵素として関わります。またヒスタミンを抑制する働きがあるため、皮膚の健康維持やアトピー性皮膚炎の治療薬としての機能もあります。ヒスタミンは皮膚の炎症を引き起こす原因物質の一つです。

欠乏すると免疫不全症や糖尿病、皮膚炎などを引き起こします。

過剰分は尿によって排泄されるため、過剰症の可能性はほとんどありません。

ビタミンB9(葉酸)

ほうれん草の葉から抽出されたため葉酸と名付けられました。

葉酸はDNA合成の補酵素としての機能や、動脈硬化を予防する機能があります。またビタミンB12とともに赤血球の生成に関わっています。欠乏すると貧血や免疫機能低下、消化管機能障害を起こします。

過剰摂取は免疫機能低下や脳機能低下を起こす可能性があります。また、ビタミンB12の欠乏を隠しビタミンB12の欠乏症が潜在化する危険性もあります。

葉酸はDNA合成の補酵素であるため細胞分裂に関わり、特に胎児の発育にとっては重要な栄養素で妊婦は推奨摂取量が多めに設定されています。

ビタミンB12

ビタミンB12は狭義ではシアノコバラミンを指すが、広義ではコバラミンを指し、アデノシルコバラミン、メチルコバラミン、スルフィトコバラミン、ヒドロキソコバラミンもビタミンB12に含まれます。

ビタミンB12はビタミンの中でも最も複雑な構造を持っています。また、天然では珍しく金属のコバルトと炭素が結合した有機金属化合物で、コバルトを持つビタミンとしてコバラミンという慣用名が付けられました。ビタミンB12は“赤いビタミン”と呼ばれることもあるが、それはコバルトによるもので、コバルトの酸化数によって色が変わります。

ビタミンB12は胃から分泌される内因子と複合体を形成することで初めて吸収されます。複合体は回腸の受容体に結合すると腸管上皮細胞から吸収されるといった仕組みを持っています。そのため、過剰に摂取しても吸収量は一回の食事で2μg程度に保たれています。吸収されない分は腸肝循環という肝臓と小腸を循環する胆汁のシステムに吸収され肝臓などにも貯蔵されます。ビタミンB12は健康な成人であれば肝臓や筋肉に大量に貯蔵(2~3mg)されており、1日あたり0.1~0.2%が失われるが、3~5年程は欠乏しない計算になります。加えてビタミンB12の多くは葉酸の再生産に使用されるため、ビタミンB12の機能の一部は十分な量の葉酸によって代替することもできます。

ビタミンB12は葉酸とともに赤血球の生成やDNAの合成に関わります。また、末梢神経の機能維持や脂肪酸の合成、エネルギー生産、葉酸の再生産にも関与しています。欠乏すると貧血や動脈硬化、神経障害などを引き起こします。

過剰に摂取しても吸収量が調整されるため健康障害は起こらない可能性が高いです。

ビタミンB12は動物性食品に多く含まれており、野菜や穀類にはほとんど含まれないため菜食主義者は欠乏する傾向があります。対策として海苔を摂取することで改善する可能性があります。


ビタミンC

ビタミンCとはアスコルビン酸のこと指しますが、正確にはアスコルビン酸デヒドロアスコルビン酸の2種類をビタミンCとして扱います。ビタミンCはコラーゲンの合成への関与や抗酸化作用といった機能を持ちます。ヒト体内のタンパク質の30%はコラーゲンが占めており、ビタミンCが欠乏すると皮膚や血管、筋肉、骨などあらゆる組織に悪影響を及ぼします。また、ビタミンEと同様に抗酸化作用を持ち活性酸素の消去やメラニンの生成抑制、過酸化脂質の生成抑制など様々な働きをします。欠乏すると血管が脆くなり壊血病を引き起こします。

過剰分は尿によって排泄されるため、過剰症の可能性はほとんどありませんが、ビタミンCは酸性度が高いためサプリなどで摂取すると胃腸に影響し吐き気や下痢を起こす場合もあります。下記のように胃腸への負担を軽減した製品もあります。アスコルビン酸に炭酸ナトリウムやカルシウムを結合することで酸性度を下げています。

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ビタミンD

ビタミンDはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)ビタミンD3(コレカルシフェロール)の2種類が存在します。なぜビタミンD1が無いのかと言えば、ビタミンD2を主成分とする混合物に誤って名付けられたため抹消されたからです。ビタミンD2はキノコなどの植物に含まれ、ビタミンD3は魚類などの動物に含まれています。

ビタミンD3は日光浴などで皮膚に紫外線を浴びることでも生成されます。ヒトを含む哺乳類の皮膚にはプロビタミンD3が存在し、紫外線(UVB)によりプレビタミンD3に変化後、体温により自発的にビタミンD3に変化します。

ビタミンDはカルシウムとリンの吸収促進や、骨へのカルシウムの沈着による骨形成、血中カルシウム濃度を保ち筋肉の機能維持などの働きがあります。欠乏すると石灰化障害(小児ではくる病、成人では骨軟化症)や骨粗鬆症などを引き起こします。

過剰摂取は高カルシウム血症や腎障害、軟組織の石灰化などを起こす可能性があります。

ビタミンE

ビタミンEとは4種類のトコフェロールと4種類のトコトリエノール、計8種類を指します。中でもα-トコフェロールがヒト体内に多く存在し、最も作用が強く、自然界にも広く存在するビタミンEです。

ビタミンEは抗酸化作用や、血管拡張、性ホルモン分泌などの機能を持ちます。抗酸化作用を持っており自身が酸化されることで、生体膜(細胞膜など)を構成する脂質の酸化を防御しています。酸化されたビタミンEは、同じく抗酸化作用をもつビタミンCによって還元され復活するためビタミンCも共に摂取することで抗酸化作用を高めることができます。欠乏すると赤血球の膜が壊れ溶血性貧血を起こすなど生体膜の機能障害を起こします。

ビタミンEの過剰摂取がビタミンK1の欠乏症である血液凝固の遅延や骨粗鬆症を起こす可能性が示唆されていますが、今のところ過剰症の報告は無く通常の食事において過剰症の心配はありません。

ビタミンK

ビタミンKは血液の凝固に関与しているため、デンマークの発見者がKoagulation(デンマーク語で”凝固”の意味)からビタミンKと名付けました。ビタミンKはK1からK5まで5種類存在しますが、天然に存在するのはK1とK2のみで一般的にこの2種類をビタミンKと呼びます。ビタミンK2のメナキノン類はメナキノン-4からメナキノン-14まで11種類存在するが、特に重要なのがメナキノン-4メナキノン-7の2種類です。

ビタミン名成分名
ビタミンK1フィロキノン
ビタミンK2メナキノン-4、メナキノン-7 など
ビタミンK3メナジオン
ビタミンK4メナジオール
ビタミンK54-アミノ-2-メチル-1-ナフトール

フィロキノンは葉緑素で生成されるため葉物等の野菜に含有し、メナキノン-4は動物性食品に広く含有し、メナキノン-7は納豆菌により産出されるため納豆など発酵食品に含有されています。

ビタミンKは血液凝固作用と凝固抑制作用に関与しており、血液にとって不可欠な補酵素です。ビタミンDと同様にカルシウムが骨に沈着する作用に関わっています。欠乏すると血液凝固の遅延や骨粗鬆症、骨折を起こす可能性があります。

過剰症の報告は無いものの、脂溶性で体内に蓄積されやすいためサプリ等での摂取は注意が必要です。

ベータアラニンが筋トレパフォーマンスを上げる理由

βアラニンを摂取すると筋トレ時のパフォーマンスが上がることが分かっています。

βアラニンを摂取するとカルノシンが生成され、カルノシンが筋肉のアシドーシス(酸性化)を防ぎ、アシドーシスによる筋細胞の機能低下を防ぐため、パフォーマンスが向上します。一言でいうとこれがパフォーマンスを上げる理由です。

筋トレパフォーマンスが上がる理由

もっと詳しく言うと、カルノシンはアミノ酸が2個結合してできたジペプチドというペプチドで、βアラニンとヒスチジンが結合してできます。βアラニンを摂取するとカルノシン合成酵素が働き、カルノシンが増加します。カルノシンは抗酸化作用とpH緩衝作用を持つため、筋トレによるアシドーシスを抑制することができます。アシドーシスの原理を簡単に言うと、グリコーゲンをエネルギーに換えるときに乳酸が発生しますが、乳酸は水溶液中で水素イオンH+を放出しpHが低下するためアシドーシスが起きます。筋肉は複数の組織が複雑に連携し動いていますが、アシドーシスが起きると、その連携におけるイオンチャネルや収縮タンパク質などのいずれかが機能低下を起こし、筋線維が動かなくなると考えられています。カルノシンはそれを抑制し、運動持続時間を向上させ、筋疲労を低減させます。

筋疲労とパフォーマンスの低下の原因について詳しくは以下記事参照

副作用のフラッシュとは

フラッシュあるいはβアラニンフラッシュと言い、人によっては摂取後に肌にピリピリとした刺激を感じる場合があります。30分程度で消失し、安全性には問題ないとされています。効いている実感が得られるためこの刺激を好んで体感している人もいるようです。

関連する成分

βアラニン

カルノシンやアンセリンなどのペプチドや、ビタミンB5であるパントテン酸の構成分子となります。ペプチドには構成されるが、タンパク質には構成されないという特徴があります。

βアラニンは血液脳関門を突破できるため、脳組織のカルノシン量も増加させ、ストレスによる影響を軽減する可能性もあります。

イミダゾールペプチド

カルノシン、アンセリン、バレニンなどがあり、2つのアミノ酸が結合してできるジペプチドです。イミダゾールペプチドという名前は共通の構成アミノ酸であるヒスチジンに含まれるイミダゾールから名付けられています。

抗酸化作用と筋肉のパフォーマンス向上効果があります。抗酸化作用とは活性酸素を無毒化し体内の酸化を防ぐ作用で、概して言えば老化防止作用です。筋肉のパフォーマンス向上に関しては前述の通り、pH緩衝作用により筋肉のアシドーシスを防ぐことで起こります。

ヒトの筋肉や神経組織にも含まれています。動物では、カルノシンは牛や豚、アンセリンは鶏肉や魚、バレニンはクジラやウミヘビに多く含まれています。回遊魚や渡り鳥が長時間運動し続けることができるのはイミダゾールペプチドが筋肉に豊富に含まれているためです。

カルノシン

2つのアミノ酸、βアラニンとヒスチジンが結合したジペプチドでイミダゾールペプチドの一種です。主に筋肉や神経組織に含まれ、筋肉中のカルノシンは加齢とともに減少します。

抗酸化作用と筋肉のパフォーマンス向上効果があります。

アンセリン

2つのアミノ酸、βアラニンとメチルヒスチジンがアミドを形成したジペプチドでイミダゾールペプチドの一種です。

抗酸化作用と筋肉のパフォーマンス向上効果だけでなく、尿酸値抑制効果があります。

尿酸とはプリン体が分解されてできる残りかすのようなものですが、アンセリンはプリン体へ戻す方向に作用する酵素(HPRT)を活性化させるため尿酸値の抑制につながります。また、乳酸の代謝酵素(LDH)を増やす効果もあるため、乳酸が減少し腎臓の負担が減ることで間接的に尿酸の排出を促す効果もあります。

HPRT(hypoxanthine phosphoribosyltransferase) : ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ
LDH(lactate dehydrogenase) : 乳酸脱水素酵素

バレニン

2つのアミノ酸、βアラニンとメチルヒスチジンが結合したジペプチドでイミダゾールペプチドの一種です。オフィジンとも呼ばれます。

抗酸化作用と筋肉のパフォーマンス向上効果だけでなく、疲労回復効果があります。

筋疲労の原因は4種類ある

筋トレなどの無酸素運動を限界まで行うと、筋疲労が起き筋肉をそれ以上動かせなくなるが、なぜ筋疲労は起こるのでしょう?

残念ながら筋疲労のメカニズムについては現在でもはっきりしておらず、明確な答えはありません。しかし、ある程度の因果関係があると分かっている筋疲労の原因が以下の4つです。

  • グリコーゲンの枯渇
  • カルシウムイオン濃度の低下
  • 活動電位の減退
  • 酸性化(アシドーシス)

これらを一つずつ説明していきます。

グリコーゲンの枯渇

筋肉のエネルギー供給経路は3種類存在し、その中でも運動強度が中程度で使われるのが“解糖系”というグリコーゲンを消費する供給系です。筋トレをすると解糖系が働きグリコーゲンを消費し、ATPを作り出します。グリコーゲンは筋肉の中にしか蓄えることができないため使い切るとしばらくは枯渇した状態になり、ATPを作れず筋肉は動かなくなります。もちろん全く動かせなくなるわけではなく低強度の有酸素運動などは可能ですが、十分な休憩により回復しない限り中強度や高強度において元のパフォーマンスは発揮できなくなります。

ATP(adenosine triphosphate):アデノシン三リン酸。生体内エネルギー通貨とも称されエネルギーの貯蔵・放出を行う。エネルギーはリン酸結合に存在しておりリン酸を分離することでエネルギーを放出する。

カルシウムイオン濃度の低下

筋肉の収縮と伸長はカルシウムイオンCa2+の濃度によって制御されています。筋肉の収縮の命令がくると筋小胞体はCa2+を放出しカルシウムイオン濃度を高めます。そうすると収縮タンパク質が結合や変形を起こし筋原線維が収縮します。簡単に言うとこれが筋肉が動く仕組みです。しかし、筋肉が高強度で働くとリン酸が発生し、リン酸がカルシウムと結合してしまいます。すると細胞内のカルシウムイオン濃度が低下し、筋肉は収縮できなくなります。

活動電位の減退

筋肉が動くメカニズムの一つに活動電位というものがあり、活動電位をうまく作れなくなると筋肉が動かなくなると考えられています。活動電位というのは、筋細胞の内外に生じる電位差のことで、これがないと筋肉に情報を伝達できず、筋肉を収縮させることができません。筋肉が動くメカニズムとして、まず脳から命令を受け運動神経の末端から神経伝達物質のアセチルコリンが放出され、筋細胞の受容体に結合します。すると微弱な電位が生じ細胞膜に存在するナトリウムチャネルが開き、ナトリウムイオンNa+が細胞内に流入することで急速に電位差が上昇し、活動電位が生じます。これに連動し筋小胞体のカルシウムチャネルが開きカルシウムイオン濃度が高まり、収縮タンパク質が結合や変形を起こすことで化学エネルギーが物理的変化を生み出し、筋原線維の収縮という形で現れます。簡単に言うとこれが筋肉が動くメカニズムです。

通常時、筋細胞の内外は、内側にカリウムイオンK+、外側にナトリウムイオンNa+が偏って存在しています。これは細胞膜に存在するポンプがATPを消費することで細胞膜内外にイオンを送り込んでいるためです。筋肉を収縮させると一時的にNa+は放出されますが、ATPを使いすぐに元に戻します。しかし、短時間で筋収縮を繰り返すことでK+が細胞外に漏れ出してしまい、ナトリウムチャネルが機能低下を起こします。それにより活動電位も発生できず筋原線維を収縮できなくなるわけです。

酸性化(アシドーシス)

酸性化とはアシドーシス(英:acidosis)とも言い、体液のpHが低下した、つまり酸性化した状態です。筋肉を酷使するとアシドーシスが起き、筋細胞のなんらかの機能が低下し、筋疲労が起きると考えられます。

前述の通り筋肉へのエネルギー供給経路は3種類存在し、高強度であれば“ATP-CP系”を使い、中強度であれば“解糖系”を使います。筋トレなどの強度の高い運動は大抵この2種類の経路からエネルギーをもらいます。そして問題のアシドーシスは解糖系の使用によって起こります。解糖系はグリコーゲンからATPを取り出しますが、その時に乳酸も発生します。乳酸は水溶液中で水素イオンH+を放出するため一時的に酸性化に向かいますが、ミトコンドリアがATPの再合成に利用するためにH+を取り込むため、すぐにはアシドーシスは起こりません。しかし、H+の取り込みが追い付かなくなるとアシドーシスが起こります。アシドーシスが起こることで、筋細胞のナトリウムチャネルやカルシウムチャネル、あるいは収縮タンパク質であるミオシンやアクチンの機能低下が起こり、その結果筋疲労が生じると考えられます。

リン脂質とは/ヒト体内での役割

リン酸をもつ脂質のこと。脂肪酸とアルコールのみで構成される単純脂質にリン酸が結合している脂質であり、複合脂質に分類される。リン脂質はグリセロールを骨格としたグリセロリン脂質と、スフィンゴシンを骨格としたスフィンゴリン脂質に分類される。

単純脂質:トリアシルグリセロール、コレステロールエステル、ロウ、セラミド
複合脂質リン脂質、糖脂質、リポタンパク質
誘導脂質:脂肪酸、ステロイド(コレステロールなど)、脂溶性ビタミン
グリセロール:炭素数3のアルコール。グリセリンとも呼ばれ医薬品や食品添加物などにも用いられる。
スフィンゴシン:炭素数18の長鎖アミノアルコール。

リン脂質とレシチンの違い

レシチンとはリン脂質を含む製品のことである。

そもそもレシチンとは、リン脂質の1種であるホスファチジルコリンのことを指しており、ホスファチジルコリン(レシチン)は、動植物中に存在するリン脂質のなかで最も多く含まれているリン脂質であった。それがいつの間にかホスファチジルコリンだけでなく、リン脂質全般をレシチンと呼ぶようになり、今ではリン脂質含有製品全般をレシチンと呼ぶようになった。

詳しくは以下記事を参照

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リン脂質の特徴

両親媒性

リン脂質は、以下のように脂肪酸からなる疎水基と、リン酸からなる親水基をもっているため、水と油のどちらにもなじむ両親媒性である。

上図は代表的なリン脂質であるホスファチジルコリンであるが、結合している2つの脂肪酸は必ずこれと決まっている訳では無いため、脂肪酸の組み合わせの数だけホスファチジルコリンの種類が存在する。
グリセロール:炭素数3のアルコール。グリセリンとも呼ばれ医薬品や食品添加物などにも用いられる。
コリン:リン脂質の一部として細胞膜を構成したり、アセチルコリンに合成され神経伝達物質として働いたり、メチル基の供給源となったりする。
飽和脂肪酸:二重結合を持たない脂肪酸で、動物性脂肪に多く含まれる。
不飽和脂肪酸:二重結合を持つ脂肪酸で、植物性脂肪に多く含まれる。

脂質二重層

リン脂質は下図のように多数の分子が集まり、脂質二重層を形成し細胞や小胞などの膜として働く。両側に親水基を持つことで大半が水分でできている間質液と細胞質の間を隔てる膜として働くことができ、内側に疎水基を持つことで親水性分子やイオンなどを透過させない遮断性も持つ。実際の細胞膜はタンパク質や糖脂質、コレステロールなども含み、複雑な構造をもつ。

リン脂質の役割

細胞膜・小胞、リポタンパク質の形成

リン脂質が形成する脂質二重層によって、細胞膜小胞の膜を構成する。また、脂質二重層は作らないが両親媒性を生かし、脂質を内側に取り込みリポタンパク質を構成する。

リポタンパク質(キロミクロン)断面のイメージ図
細胞膜:脂質とタンパク質が主要構成成分で脂質の内50%以上をリン脂質が占める。細胞膜にはタンパク質でできたチャネルやポンプがあり、細胞間コミュニケーションを担っている。
小胞:細胞内に存在する脂質二重層を膜とする球形の物質輸送・貯蔵器官。
リポタンパク質:血中に溶けるために外側をリン脂質やタンパク質で構成し、脂質を内部に取り込むことで脂質を運搬する複合体。

脳や神経組織

脳組織から水分を除いた固形成分のうち半分以上が脂質であり、さらに脂質の半分以上がリン脂質である。リン脂質を初めコレステロール等の脂質は、脳組織において細胞膜やミエリン鞘の構成成分であり、重要な役割を持つ。

ミエリン鞘:神経細胞から他細胞に出力する軸索を覆う組織で、絶縁性を高めパルスの伝達速度を高める機能がある。髄鞘(ずいしょう)とも。

シグナリング分子

リン脂質のなかでもホスファチジン酸リゾホスファチジン酸シグナリング分子としての働きも持つ。シグナリング分子とは細胞間や細胞内で情報を伝達する分子で、ホルモンやサイトカインなどがそれにあたる。ホスファチジン酸は細胞質に溶けているタンパク質を細胞膜に補充する機能があり、リゾホスファチジン酸は細胞外から細胞内へのシグナル伝達の役割を持つ。リゾホスファチジン酸に対応する細胞膜受容体は6種類が発見されており、それらはGタンパク質共役型受容体という形式の受容体である。

シグナリング分子:細胞間・細胞膜上・細胞内において情報を伝達する分子である。疎水性低分子のような透過性が高いシグナリング分子は細胞膜を直接透過し細胞内の受容体に結合できるが、そうでない場合は細胞膜上の受容体に認識されることで細胞内に情報を伝える。
受容体:細胞膜に存在するタンパク質でできた装置。対応した分子構造のみを認識しシグナリング分子等が結合すると構造を変化させるなどして、細胞内に何らかのシグナルを伝える。
Gタンパク質共役型受容体:受容体の形式の一つ。シグナリング分子が受容体に認識されると細胞内側の構造を変化させGタンパク質というシグナリング分子を活性化させ細胞内へ情報を伝達する。ヒト体内にはGタンパク質共役型受容体が300種類以上存在する。

人工的なリポソーム

リン脂質を用いて人工的にリポソームを形成し、リポソーム内にサプリメントや医薬品の成分を入れ、効果的に体内に成分を運搬する研究などもされている。リポソームとは脂質二重層によって形成され、内部に物質を取り込み運搬する物質である。細胞小器官の小胞などがこれにあたる。

リポソーム断面のイメージ図

産業資源として

リン脂質は生体内だけでなく、塗装、化粧品、製薬などの業界でもよく用いられる物質である。両親媒性であるため乳化剤界面活性剤としても働き、かつ無毒であるため食品添加物などにも使える有用な物質である。

グリセロリン脂質

グリセロールを骨格とした脂質で、グリセロールのC1位には飽和脂肪酸が、C2位には不飽和脂肪酸が結合している場合が多い。下図は代表的なグリセロリン脂質ホスファチジルコリンの構造式である。

グリセロリン脂質の例

ホスファチジン酸

他の多くの脂質の前駆物質であり、シグナリング分子としても働く。細胞内では酵素によって分解され低い濃度に保たれている。

ホスファチジルコリン

細胞膜の主要構成成分で、動植物中に最も多く含まれるリン脂質である。アセチルコリン生合成経路におけるコリンの供給源でもある。以前はレシチンとも呼ばれた。

ホスファチジルセリン

脳や神経組織に多く含まれ、ミエリンの10%以上を占める。摂取により認知機能を高める可能性がある。

リゾホスファチジン酸

ホルモンやサイトカインのような細胞間の情報伝達を行うシグナリング分子としての役割を持つ。脂肪酸が1本少ないため水溶性が比較的高い。

リゾホスファチジルコリン

リゾホスファチジン酸の基質。血漿中のオートタキシン(リン脂質代謝酵素)によりリゾホスファチジン酸に分解される。

ホスファチジルエタノールアミン

細胞膜の構成成分で、動植物中に2番目に多く含まれるリン脂質である。セファリン、ケファリンとも呼ばれる。脳から単離されたため,ギリシア語で脳を意味するケファレーから名付けられた。

ホスファチジン酸のC3位のリン酸が脂肪酸に置き換わり、C1C2C3がすべて脂肪酸で埋まると単純脂質トリアシルグリセロールになる。

トリアシルグリセロールの簡易図

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エステルについて説明

エステルとは、カルボン酸とアルコールの脱水縮合によってできる化合物である。

カルボキシ基(COOH)と水酸基(OH)からOHとHが分離して結合した水分子が離脱し、残ったCOとOが結合しエステル結合(COO)ができる。

衣料用繊維やペットボトルの材料であるポリエチレンテレフタレート(PET)やロウなどはエステルの一種である。

※より正確に言えば、このエステルはカルボン酸エステルと言い、エステルの分類の一つである。他にもリン酸エステルや硫酸エステルなどがあるが、単にエステルといった場合このカルボン酸エステルを指すことが多い。

スフィンゴリン脂質

スフィンゴシンを骨格としたリン脂質である。下図は代表的なスフィンゴリン脂質であるスフィンゴミエリンの構造式である。スフィンゴシンに脂肪酸とホスホコリン(コリンとリン酸)が結合している。

また、スフィンゴシン脂肪酸が結合した脂質をセラミドという。アルコールと脂肪酸のみで構成されるため、単純脂質に分類される。スフィンゴ脂質の骨格はスフィンゴシンであるが、構造上セラミドも共通している。皮膚の角質層の成分としても知られている。

スフィンゴリン脂質の例

スフィンゴミエリン

体内に存在するスフィンゴリン脂質とスフィンゴ糖脂質を含めた全スフィンゴ脂質のうち85%を占める。細胞膜やミエリン鞘の構成成分である。また細胞膜においては外側の面に多く存在することが分かっている

イノシトールホスホリルセラミド

真菌類や植物に存在する。イノシトール自体は糖アルコールの一種で、動植物中に含まれるありふれた成分である。

セラミドホスホエタノールアミン

昆虫などの節足動物に存在する。セラミドシリアチンは類似体で、エタノールアミンとリン原子への結合が少し異なる。セラミドホスホエタノールアミンはリンとP-O-Cの形で結合しているが、セラミドシリアチンはP-Cの形で結合している。

セラミドシリアチン

セラミドシリアチンはセラミドアミノエチルホスホン酸とも言い、イカなどの軟体動物に存在する。

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レシチンの効果/ホスファチジルコリンとの違い

レシチン(lecithin)とは

レシチンはリン脂質を含む製品の総称であるが、以前はリン脂質の1種であるホスファチジルコリンのことを指していた。ホスファチジルコリンは、動植物中に存在するリン脂質のなかで最も多く含まれているリン脂質であり、いつの間にかそれをレシチンと呼ばずにリン脂質全般をレシチンと呼ぶようになった。

レシチンの名前の由来

元々、ホスファチジルコリンは卵黄から初めて分離されたため、ギリシャ語で卵黄を意味するλέκιθος(レキトス)からレシチンと名付けられた。しかし、今ではその名前では呼ばず、ホスファチジルコリンと呼ぶ。

ここで注意したいのが、今でもホスファチジルコリンをレシチンと呼んでいる場合があるため、レシチンがホスファチジルコリンを指しているのかリン脂質を指しているのか判断しなければならない点である。

レシチンの種類

レシチン(リン脂質)製品は原料によって主に2種類に分類され、卵黄レシチン大豆レシチンに分けられる。市場に出回っているのは製造費が安価な大豆レシチンが多い。卵黄に含まれるリン脂質は約9%で、そのうちホスファチジルコリンは約84%含まれる1)大豆に含まれるリン脂質は約2%で、そのうちホスファチジルコリンは約40%含まれる。このように原料によってレシチンの組成が異なるため、若干作用は異なる。

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レシチンの効果

1.記憶力や学習能力の向上と認知症の予防

レシチンにはホスファチジルコリンが入っていることが多いため、コリンの供給源になることでアセチルコリンの生成に役立つ。アセチルコリンは神経伝達物質であり、脳神経や交感神経、運動神経おいて重要な物質である。円滑に刺激を伝達するために必要なアセチルコリンの生成が記憶力や学習能力の向上につながる。また脳はホスファチジルコリンをはじめ多くのレシチンによって構成されており、レシチンの摂取は脳機能を維持し、認知症やアルツハイマーを予防する可能性がある。

2.動脈硬化予防・コレステロール値の改善

レシチンはコレステロールを運搬するリポタンパク質の構成成分である。レシチンを摂取するとHDL(善玉コレステロール)が増え、LDL(悪玉コレステロール)が減り、動脈硬化や脂質異常症(高脂血症)の予防・改善につながる。

3.肝機能の改善

脂肪肝や肝硬変の予防効果があるとされる。

4.美肌効果・ニキビ予防効果

レシチンの乳化作用により、血液中でコレステロールが固まるのを防ぎ、体の血液循環が良好になり肌の健康につながる。

レシチンの他用途

レシチンは食品としてだけでなく、塗装、化粧品、製薬など他の産業でもよく用いられる物質である。詳しくは以下の記事に載っているが、レシチンは両親媒性であるため水と油の両方になじむ。そのため乳化剤や界面活性剤としても働き、かつ無毒であるため塗装業界だけでなく食品添加物などにも使える有用な物質である。

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ホスファチジルコリンとは

細胞膜の主要構成成分で、動植物中に最も多く含まれるリン脂質である。アセチルコリン生合成経路におけるコリンの供給源でもある。1845年にフランスの化学者で薬剤師のセオドア・ニコラス・ゴブリーによって初めて分離され、レシチンと名付けられた。構造を極めて簡易的に表すと下図のようになる。ホスホコリンと2本の脂肪酸がグリセロールにエステル結合している。

参考文献

1) 奈良部 均,リン脂質-工業的生産の現状と将来-,油化学,41(9), p. 897-902.

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脂質の種類・脂肪細胞と脂肪の貯蓄

脂質とは三大栄養素の一つであり、ヒトの体を構成する重要な栄養素である。

脂肪と一口に言っても、脂肪酸やコレステロールなど多くの種類がある。また、名称に統一感がなく覚えにくいため、さまざまな脂質やその機能に関する世間の認知度も低いと思われる。特に脂質と聞くと健康に悪いイメージが持たれがちであるが、ビタミン(脂溶性)やn-3系脂肪酸などを代表に健康に必要な脂質も多い。

ここでは、主な脂質の特徴や、体内での脂肪の吸収・貯蓄の仕組み脂肪細胞の種類について解説した。

脂質と脂肪の違い

脂質脂肪の違いと言えば細かなニュアンスの違いだけである。例えば、脂質は食品や栄養素を指し、脂肪は体内に貯蔵されている中性脂肪や体脂肪を指すことが多いなど。定義もなく厳密な違いもないため、ここでは両者は同じものとして扱う。

主な脂質と分類

  1. 単純脂質:トリアシルグリセロール、コレステロールエステル、ロウ、セラミド
  2. 複合脂質:リン脂質、糖脂質、リポタンパク質
  3. 誘導脂質:脂肪酸、ステロイド(コレステロールなど)、脂溶性ビタミン
単純脂質とは、脂肪酸とアルコールがエステル結合した脂質
複合脂質とは、脂肪酸とアルコールに加え、リン酸、糖類、窒素化合物などが結合した複雑な脂質
誘導脂質とは、単純脂質と複合脂質を加水分解してできる脂質

トリアシルグリセロール(中性脂肪)

トリアシルグリセロールとはグリセロールに3本の脂肪酸が結合してできる脂質である。 トリアシルグリセロールトリグリセリド、TG、中性脂肪などと呼ばれることもある。

グリセロールとは、グリセリンとも言い、化粧品や軟膏などに用いられるアルコールの一種である。無色透明の糖蜜状液体で甘味を持っている。
中性脂肪は、“酸性”の脂肪酸と“塩基”性のグリセロールが結合したものであるため、“中性”脂肪と呼ばれる。

脂肪酸

脂肪酸は主にヒトのエネルギー源としての役割を持つが、必須脂肪酸のように健康維持の役割を持つものもある。。

炭水化物(4kcal/g)に比べ脂質(9kcal/g)が大きなエネルギーを持つのは脂肪酸のおかげである。脂肪酸は疎水性のため水を含まないが、炭水化物は名前通り炭素と水で構成されているため、脂肪に比べると密度が大きい。そのため炭水化物は1gあたりのエネルギーが少ない。

主にトリアシルグリセロールに含まれている脂肪酸だが、コレステロールエステルやリン脂質などにも含まれている。

脂肪酸の分類

  • 二重結合の有無による分類
  1. 飽和脂肪酸 (二重結合をもたない)
  2. 不飽和脂肪酸 (二重結合をもつ)
    1. 一価不飽和脂肪酸 (二重結合を1個もつ)
    2. 多価不飽和脂肪酸 (二重結合を2個以上もつ)
  • 炭素数による分類
  1. 短鎖脂肪酸 (炭素数4以下)
  2. 中鎖脂肪酸 (炭素数6~12)
  3. 長鎖脂肪酸 (炭素数14以上)
  4. 超長鎖脂肪酸 (炭素数22以上)

※炭素数に厳密な決まりはないため、上記はおおよその数である。

飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸

飽和脂肪酸は動物性脂肪に多く、不飽和脂肪酸は植物性脂肪に多く含まれている。ただし、カカオ脂やパーム油などの例外も多い。飽和脂肪酸の過剰摂取は心血管疾患のリスクを高める可能性があり、食事摂取基準では、全摂取カロリーの7%以下が飽和脂肪酸の推奨摂取量とされている。一般的に不飽和脂肪酸の方が健康に良いとされているが、飽和脂肪酸と同様に不飽和脂肪酸の過剰摂取も害悪である。例えば、酸化しやすい不飽和脂肪酸を過剰摂取すると体内で酸化を防ぐために抗酸化作用をもつビタミンEが消費され、ビタミンE欠乏症になることもある。

短鎖脂肪酸

短鎖脂肪酸が含まれる食品は少なく、ヒトの体内に存在する短鎖脂肪酸のほとんどは大腸内の腸内細菌による発酵で産出される。食物繊維レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)、オリゴ糖などを摂取すると腸内細菌が短鎖脂肪酸を産出する。大腸で吸収された短鎖脂肪酸は、一部は大腸上皮細胞のエネルギー源になり、残りは肝臓や全身に運ばれ代謝される。短鎖脂肪酸は発がん予防、肥満予防、糖尿病予防、ミネラル吸収促進など様々な効果がある。

中鎖脂肪酸

中鎖脂肪酸は牛乳やパーム油などに多く含まれる。代謝経路が短くエネルギーに変換されやすいため脂肪細胞に貯蓄されにくい。また、アディポネクチンというホルモンを増加させることで糖尿病や動脈硬化を防ぐ効果がある。さらに、有酸素運動メインの持久的運動において運動能力の向上効果もある。これは中鎖脂肪酸がエネルギーへの変換速度が速いという特徴を持つため、糖質に近い働きを行い、使用可能な体内エネルギーの総量が増え持久力やパフォーマンスが向上したと考えられる。

長鎖脂肪酸

長鎖脂肪酸は動物性植物性問わず様々な脂肪に含まれており、過剰摂取しがちな脂質であるが、人体に重要な働きをするものもある。例えば牛肉や豚肉、オリーブオイルなどに含まれるオレイン酸は動脈硬化や心疾患予防効果がある。また、次項で説明している必須脂肪酸も長鎖脂肪酸である。

必須脂肪酸

脂肪酸の中には体内で生理活性物質(ビタミンやホルモンのような物質)として働き、健康な血管や血液の維持、脳神経の形成、中性脂肪値の減少などの重要な機能を持つものもある。これらの内、体内で合成できないため食物から摂取する必要がある脂肪酸を必須脂肪酸という。かつて必須脂肪酸が脂肪酸であると分かるまではビタミンFと呼ばれていたこともある。

必須脂肪酸にはn-3系脂肪酸n-6系脂肪酸がある。n-3系ω-3、オメガスリーともいう)というのは最初に現れる二重結合の位置が3番目の炭素にあるという意味であり、他にもn-7やn-9、n-10などがある。n-3系脂肪酸n-6系脂肪酸の構造は、炭素数が14以上あり、二重結合が含まれるため、“長鎖”で“不飽和”の脂肪酸に分類される。

n-3系とn-6系は体内での代謝が競合するためどちらが過剰になっても良くない。n-6系は比較的多くの油脂類に含まれているため欠乏することは稀であり、n-3系の方が不足しがちである。

n-3系脂肪酸

代表的なn-3系脂肪酸にはα-リノレン酸、イコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などがある。

α-リノレン酸はアマニ油やエゴマ油に多く含まれており、老化予防効果やうつ症状軽減効果がある。またα-リノレン酸の内10~15%はEPADHAに変換されるため、α-リノレン酸はEPADHAを補う作用もある。

EPADHAは、イワシ、マグロ(トロ)、サバなどの脂ののった魚に多く含まれている。

EPAは血管や血液を健康を維持、脂肪燃焼効果、心臓病や脳梗塞の予防効果がある。

DHAは血管や血液の健康の維持、脂肪燃焼効果、免疫反応の調整、アレルギー疾患や脳卒中、皮膚炎の予防効果、脳の神経や記憶力、認知機能を良好にする効果がある。

イコサペンタエン酸(Eicosapentaenoic Acid : EPA)
ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic Acid : DHA

n-6系脂肪酸

代表的なn-6系脂肪酸にはリノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸などがある。

リノール酸を含めn-6系脂肪酸は血中コレステロール値や中性脂肪値を低下させる効果がある。リノール酸は、リノール酸γ-リノレン酸→ジホモ-γ-リノレン酸→アラキドン酸の順で変換され、摂取量が足りない他のn-6系脂肪酸を補う効果もある。リノール酸はグレープシードオイル、綿実油、コーン油、大豆油などに多く含まれる。

γ-リノレン酸は健康な皮膚の維持に必要な栄養素であり、アトピー性皮膚炎の治療にも用いられている。γ-リノレン酸は月見草種子油、ボラージ草種子油、カシス種子油、くじら、母乳などに多く含まれている。

アラキドン酸は脳の神経細胞の主要な成分であり、認知機能を向上させる効果がある。特に胎児にとっては脳の神経細胞が急速に発達する時期であるため重要な栄養素である。そのため諸外国では粉ミルクに添加されていることもある。また体内で重要な働きをするプロスタグランジンというホルモンの原料にもなっている。アラキドン酸は肉類、魚介類、レバー、卵、母乳などに多く含まれている。

プロスタグランジン:高血圧予防、コレステロール値の減少、血液凝固阻止、血管拡張、気管支拡張、子宮収縮など、働きは多岐にわたる。生体の局所で生成され、その周囲に働くため局所ホルモンと呼ばれる。アラキドン酸を摂取すると高血圧予防、コレステロール値の減少の効果があると言われるのはプロスタグランジンによる。

様々な効果があるn-6系脂肪酸だが、普通の生活で不足することは稀であり、過剰摂取すると大腸がんなどのリスクが高まるため、過度の摂取は禁物である。

トランス脂肪酸

前提として、二重結合を持つすべての化合物はシス型トランス型の2種類が存在する。不飽和脂肪酸(二重結合を持つ脂肪酸)もシス型とトランス型が存在し、天然の不飽和脂肪酸はほとんどがシス型であり、トランス型はごく微量である。

〈不飽和脂肪酸が魚や植物に多く含まれる理由〉
天然の不飽和脂肪酸はほとんどがシス型であり、シス型は折れ曲がった構造をしているため細胞膜の柔軟性を高める働きをもつ。またその構造ゆえに融点が低く常温で液体という性質をもつ。植物や変温動物である魚が、融点の低い不飽和脂肪酸を多くもつのは理にかなったことだと分かる。

シス型不飽和脂肪酸である植物油や魚油は液体であるため、保存や製品加工の都合から固体にしたい場合がある。その際、水素を添加することで人工的に飽和脂肪酸に変え、固体にすることができる。その過程で副次的に作られるのがトランス脂肪酸である。シス型不飽和脂肪酸に水素を添加すると、ほとんどは飽和脂肪酸になるが、一部がトランス型不飽和脂肪酸に変化してしまうため起こる。以前はこの製法でマーガリンなどが作られていたが、トランス脂肪酸の過剰摂取で心筋梗塞などのリスクが高まる可能性があることが分かり、現在では原料に天然の飽和脂肪酸を使うなど製法を変えることで、天然油脂に含まれるトランス脂肪酸の割合と同等かそれ以下まで含有率を下げている。そのような背景があり現在は、マーガリンよりバターの方がトランス脂肪酸の含有率が多いこともある。

コレステロール

細胞膜を構成し、胆汁酸やビタミンD、ステロイドホルモンを生成するのに必要な物質である。コレステロールはコレステロールエステルから脂肪酸を取り除いた遊離コレステロールのことを指す。LDLコレステロールを悪玉コレステロール、HDLコレステロールを善玉コレステロールと呼ぶことが多いため2種類のコレステロールが存在すると勘違いしがちであるが、どちらも同じコレステロールである。2つの違いはコレステロールを内包するリポタンパク質の違いであり、それにより体への働きに違いがある(詳しくは後述)。LDLとHDLの量を直接計測できればいいが、無理なのでそれぞれに含まれるコレステロールの値をLDLとHDLの指標としている。

リン脂質

両親媒性(水と油どちらにもなじむ)をもつことから脂質が血中を移動するためのリポタンパク質の形成に必要な物質である。また、細胞膜やリポソーム(生体内の栄養素などの輸送役)を構成する重要な物質である。有名なリン脂質であるレシチンは、トリアシルグリセロールの3位の脂肪酸をコリンリン酸に置き換えた物質である。リン脂質は疎水性の脂肪酸親水性のリン酸をもつため両親媒性をもつ。

脂質の吸収と代謝、貯蓄

ヒトが摂取する脂質にはトリアシルグリセロール、コレステロールエステル、リン脂質などがある。これらは胃リパーゼと膵リパーゼによって分解され、脂肪酸グリセロールなどになった後、小腸上皮細胞に吸収される。その後直接肝臓に運ばれる脂質と全身に運ばれる脂質に分かれる。“短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、グリセロール”門脈という血管を通り直接肝臓に運ばれ代謝される。“長鎖脂肪酸、モノアシルグリセロール、コレステロール、リン脂質”は再合成ののち合体しキロミクロンという複合体を作る。

脂質は水に溶けないためキロミクロンを形成し血中を循環する。キロミクロンはリポタンパク質の1種で、最も大きいリポタンパク質である。キロミクロン小腸上皮細胞から乳糜管→リンパ管を通り心臓に近い鎖骨下静脈に合流し、全身に運ばれる。全身の脂肪細胞や筋細胞などに運ばれると細胞内の酵素によってキロミクロン内のトリアシルグリセロールから脂肪酸が細胞内に取り込まれ“貯蔵”あるいは“代謝”される。そのようにしてトリアシルグリセロールはなくなっていきキロミクロンはキロミクロンレムナント(残滓)として肝臓に吸収される。

残ったコレステロールとリン脂質はまた別のリポタンパク質を形成し、体内を循環する。代表的なリポタンパク質はキロミクロン、VLDL、LDL、HDLの4種類である。キロミクロンVLDLはどちらもトリアシルグリセロールを運ぶのが役割だが外因性内因性かにより異なり、食事から摂取し小腸で吸収された外因性のトリアシルグリセロールはキロミクロンが運び、肝臓で合成された内因性のトリアシルグリセロールはVLDLが運ぶ。LDLHDLはどちらも肝臓と末端組織を循環し、コレステロールの“供給”“回収”の役割を持つ。前述の通りLDL(供給役)が悪玉、HDL(回収役)が善玉と呼ばれる。細胞内ではコレステロールを代謝することができないためLDLとHDLによって細胞内のコレステロール量は一定水準を保っている。

LDL (low density lipoprotein):低密度リポプロテイン
HDL (high density lipoprotein):高密度リポプロテイン
VLDL (very low density lipoprotein):超低密度リポプロテイン
※キロミクロン(chylomicron)は乳糜(chyle)と小さい(micron)が語源であり、キロとミクロンは接頭辞のキロ(kilo)でも、単位のミクロンでもない。

このように全身を循環する一方で、腸肝循環という肝臓と小腸間での循環もある。コレステロールは肝臓で胆汁酸に変えられ胆嚢に貯められたあと十二指腸に分泌される。胆汁酸はミセルを形成することで脂質の吸収を促進するなどの重要な役割を持っている。役目を終えた胆汁酸は、小腸で脂質と一緒に吸収され門脈を通り肝臓に戻る。胆汁酸はこのように腸と肝臓を循環する。おおよそ95%が肝臓に戻り、再利用される。

脂肪細胞の種類

白色脂肪細胞褐色脂肪細胞の2種類が存在する。簡単に言うと、白色脂肪細胞はエネルギー源であるトリアシルグリセロールを貯蓄する細胞であるのに対し、褐色脂肪細胞脂肪酸を分解し熱を発生させる細胞である。

白色脂肪細胞
褐色脂肪細胞

白色脂肪細胞は体内の余剰グルコース(ブドウ糖)やリポタンパク質により運ばれてきた脂肪酸などから、酵素によりトリアシルグリセロールを生合成し、細胞内の脂肪滴に貯蓄する。エネルギー過剰環境の白色脂肪細胞は貯蓄に伴い肥大化し、それ以上溜め込めなくなると細胞分裂により数を増やしさらに溜め込めるようにする。体内のエネルギーが枯渇した時にトリアシルグリセロールを分解し脂肪酸グリセロールを筋肉や肝臓に供給する。トリアシルグリセロールの分解はホルモンにより制御されている。白色脂肪細胞は主に皮下か内臓周囲に多く存在し、断熱効果や内臓の保護や位置の安定などの役割を果たしている。ホルモンの影響により、女性は皮下脂肪が付きやすく男性は内臓脂肪が付きやすい傾向がある。

褐色脂肪細胞は新生児や冬眠動物が保有し、成人にはほとんど見られない細胞である。運動なしで熱を発生させることができるため、動くことができない新生児や冬眠動物には特に必要とされる。細胞内には多量のミトコンドリアが存在しそれらが脂肪酸を分解し熱に変えている。背中(胸椎周辺)に比較的多く局在し、寒さによって活性化する可能性があるといわれている。

滅菌・殺菌・消毒・除菌・抗菌の違い

「滅菌・殺菌・消毒・除菌・抗菌」それぞれに厳密な定義は存在しないが、各業界で使用されている基準表示に関するルールなどは定められている。

  1. 滅菌
    • 意味 すべての微生物を死滅または除去し、無菌にすること。あるいは菌の存在する確率が100万分の1以下であること。
    • 基準の一例 SAL≦10-6(無菌性保証水準が10-6以下であること)
    • 基準元 日本薬局方
    • 製品例  高圧蒸気滅菌器、滅菌済み絆創膏
  1. 殺菌
    • 意味 微生物を殺滅すること
    • 規則 医薬品・医薬部外品にのみ使用可能な表現
    • 規則元 公正競争規約施行規則、日本衛生材料工業連合の自主基準など
    • 製品例 口腔用殺菌スプレー、消毒液
  1. 消毒
    • 意味 殺菌と同じ
    • 規則 殺菌と同じ
  1. 除菌
    • 意味 微生物を物理的あるいは化学的に取り除くか、減らすこと
    • 基準 除菌活性値≧2
    • 基準元 洗剤の除菌表示に関する公正競争規約、施行規則
    • 規則 (後述)
    • 製品例 洗剤、石鹸
  1. 抗菌
    • 意味 微生物の増殖を防ぐこと

抗菌については以下の記事で詳しく解説している。

滅菌の基準/無菌性保証水準とは

日本薬局方によると、最終滅菌法で無菌製剤を製造する際、滅菌後の無菌性の基準として無菌性保証水準≦ 10-6 を条件としている。

無菌性保証水準SALSterility Assurance Level)(以下、「SAL」)とは、滅菌後の製品に微生物1個が存在する確率のことで、通常10-nで表す。 SAL=10-6 であれば微生物の存在確率は100万分の1ということである。

※無菌製剤の製造法について
無菌製剤の製造法には最終滅菌法無菌操作法がある。無菌操作法は使用する器具や設備をあらかじめ滅菌し、クリーンルーム内で作業を行い無菌環境を管理して製造する方法である。最終滅菌法は最終工程で高圧蒸気等で滅菌する製造法である。製薬を直接滅菌できない場合(例えば熱に弱いなど)、無菌操作法などが選択される。

「殺菌・消毒」表示が医薬品・医薬部外品にしか使用できない理由

公正競争規約、自主基準、国のホームページにその旨が記載されていたので、それぞれ該当箇所を引用した。

  1. 家庭用合成洗剤及び家庭用石けんの表示に関する公正競争規約施行規則の一部抜粋
第5条の2第2項 事業者は、合成洗剤又は石けんが除菌基準を満たすものであっても、次に掲げる表示をしてはな らない。
(1) 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)に抵触する表示(例)「殺菌」
  1. 日本衛生材料工業連合会が定めている除菌を標榜するウエットワイパー類の自主基準の一部抜粋
製品の容器または被包の他、パンフレット、広告、ホームページ等に以下の表現をしてはならない。
(1) 薬機法に抵触する表示
殺菌、消毒、滅菌、外皮消毒の標榜
  1. 厚生労働省・経済産業省・消費者庁の特設ページ新型コロナウイルスの消毒・除菌方法についての一部抜粋
【参考情報1 「消毒」と「除菌」について】
「消毒」は、菌やウイルスを無毒化することです。「薬機法」(※1)に基づき、厚生労働大臣が品質・有効性・安全性を確認した「医薬品・医薬部外品」の製品に記されています。
「除菌」は、菌やウイルスの数を減らすことです。「医薬品・医薬部外品」以外の製品に記されることが多いようです。「消毒」の語は使いませんが、実際には細菌やウイルスを無毒化できる製品もあります(一部の洗剤や漂白剤など)。
※1 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

以上が、殺菌・消毒の表示が医薬品・医薬部外品にしか使用できない理由である。

除菌の基準値と表示ルール

除菌については2つの自主基準が定められており、「洗剤類」に関するものと、「ウエットワイパー類」に関するものがある。ただし、あくまでも自主基準であり、法的拘束力は弱い。

洗剤類は洗剤・石けん公正取引協議会家庭用合成洗剤及び家庭用石けんの表示に関する公正競争規約を定めており、ウエットワイパー類は日本衛生材料工業連合会除菌を標榜するウエットワイパー類の自主基準を定めている。

ここで言う洗剤類とは、台所用、洗濯用、ガスレンジ用、ガラス用、トイレ用、浴室用、などの洗剤・石鹸類を指す。ウエットワイパー類は対人・対物両用の雑貨品カテゴリーのウエットティッシュを指す。

除菌の基準値(洗剤類)

製品に「除菌」の表示をするには、洗剤・石けん公正取引協議会が定めた試験方法・試験機関で試験を行い基準値を満たす必要がある。

試験は製品の種類によっていくつかあるが、おおまかな流れは次の通りである。まず、菌を接種した試験片を2つ用意し、試験液(除菌効果を測りたい洗剤)と、対照液(菌への作用がほとんどない溶液)をそれぞれの試験片に接種する。その後、一定時間放置しそれぞれの菌数を測定する。その菌数の差を除菌活性値と呼び、菌数の差が大きいほど、すなわち除菌活性値が大きいほど除菌効果が高い。菌数は膨大のため常用対数で表す(菌数1000なら3.0、菌数10000なら4.0)。

除菌活性値 =(対照液の菌数の常用対数値)-(試験液の菌数の常用対数値)

除菌活性値≧2.0が基準値である。除菌活性値=2.0は菌数を1/100に抑制する効果があり、除菌活性値=3.0なら1/1000に抑制する効果がある。また、試験に使用する菌は、黄色ブドウ球菌大腸菌の2菌種である。この2菌種はグラム陽性菌グラム陰性菌に分類され、薬剤感受性などが異なる。異なる性質の菌を使用することは、幅広い菌への活性を調べるためによく用いられる手法である。

表示ルール (洗剤類)

基準値を満たしているかだけでなく、表示の際は様々なルールを守らなければならない。 家庭用合成洗剤及び家庭用石けんの表示に関する公正競争規約および同施行規則によると、

  • 全ての菌を除菌するわけではない旨の表示をしなければならない。(例)「全ての菌を除菌するわけではありません。」
  • 健康被害を防止又は軽減する効果があるかのような誤認を与えるおそれのある表示をしてはならない。(例)「除菌で安全」「除菌で病気を防ぐ」

などが規定されており他にも細かい規則がある。

試験方法と試験機関の詳細や表示規則については以下を参照

洗剤・石けん公正取引協議会 資料一覧

除菌の基準値(ウエットワイパー類)

日本衛生材料工業連合会は除菌に関する自主基準を定めており、会員事業者は定められた試験方法・試験機関で試験を行い基準値を満たしたうえで除菌表示をしなければならない。

試験のおおまかな流れは以下の通りである。試験は専用の“レール”“おもり”“ガイド”を使用し、手動で行う。まず、幅2~3㎝長さ15㎝程度のレールの中央部の範囲(1.5㎝×9.0㎝)に菌液を接種する。菌液が乾いたら、試験布(=ウエットワイパー)におもりを載せてレールに沿ってスライドさせレール上の菌を拭き取る。その際ガイドを持ってスライドさせることで、試験布におもり以外の圧力をかけずに移動できる仕組みになっている。拭く速度と時間はメトロノームを用いることで一定 (5秒で5往復) にする。拭き取り後、定められた方法でレールから菌を回収し、菌数を測定する。除菌効果を試す試験布と、対照布(除菌作用のない標準的な布) でこれらの工程を3回ずつ繰り返し、菌数の平均値を出す。前述した洗剤類の除菌基準と同様で、その菌数の差が除菌活性値となる。

除菌活性値 =(対照布の菌数の常用対数値の平均値)-(試験布の菌数の常用対数値の平均値)

除菌活性値≧2.0が基準値である。除菌活性値=2.0は菌数を1/100に抑制する効果があり、除菌活性値=3.0なら1/1000に抑制する効果がある。また、試験に使用する菌は、黄色ブドウ球菌大腸菌の2菌種である。

表示ルール (ウエットワイパー類)

  • 全ての菌を除菌するわけではない旨の表示をしなければならない。(例)「全ての菌を除菌するわけではありません。」
  • 健康被害を防止又は軽減する効果があるかのような誤認を与えるおそれのある表示をしてはならない。(例)「除菌で安全」「除菌で病気を防ぐ」
  • 「(一社)日本衛生材料工業連合会自主基準による」旨の表示または日衛連が定める除菌マークのいずれか、あるいはその両方の表示。

などが規定されており他にも細かい規則がある。

試験方法と試験機関の詳細や表示規則については以下を参照

一般社団法人 日本衛生材料工業連合会 | ウエットワイパー類の自主基準

乳児にハチミツがNGな理由/加熱すればOK?【乳児ボツリヌス症】

なぜ1歳未満の乳児にハチミツを与えてはいけないのか

ハチミツにはボツリヌス菌の芽胞が微量に含まれている可能性があり、それが乳児の腸で増殖し毒素を産生するためである。大人と違い1歳未満の乳児は腸内細菌叢が未熟でありボツリヌス菌が増殖しやすい環境にあるために起こる。乳児ボツリヌス症の94%は6か月未満の乳児で症例の最高月齢は11か月の乳児である。ボツリヌス毒素は小腸で吸収され末梢神経と結合し弛緩性麻痺を起こす。呼吸障害が起こると死に至ることもあるが致死率は食中毒に比べると低く2%程度である。

芽胞はボツリヌス菌が悪環境に置かれたときに増殖をやめて作り出す耐久性の高い細胞で、再び適した環境に戻ると通常の増殖する菌体に戻る。

ちなみにハチミツは水分が17%、PH値3.8であり、低水分、高酸性度というボツリヌス菌が増殖困難な環境のためハチミツ内に存在はしても増殖することはない。

加熱すれば死滅するか

ボツリヌス菌は100℃で6時間加熱で死滅し、

芽胞は120℃で4分の加熱で死滅。(※Ⅰ群に属す毒素型の場合)

ボツリヌス毒素は85℃で15分(100℃で1~2分)加熱すると失活する。

毒素の失活は比較的簡単だが、菌と芽胞は熱に強く通常の加熱で死滅させるのは難しい。特に芽胞は100℃では死滅しないためオートクレーブ処理など特殊な方法が必要である。

ボツリヌス菌とは

ボツリヌス症が認識されはじめたきっかけは18世紀頃のドイツでのソーセージ食中毒である。そのためボツリヌスはラテン語でソーセージを意味するbotulusから名付けられている。

酸素のある場所では増殖できない偏性嫌気性菌であり、芽胞の状態で土壌、河川、海水など自然界に広く存在する。

ボツリヌス菌が作るボツリヌス毒素は神経毒に分類され、自然界で最も強い毒性を持つ。ヒトでの致死量は非経口的摂取の場合1.3~2.1ng/kgである。つまり70kgの人であればたったの0.09~0.15μg(経口摂取の場合70μg)で致死量となる。しかし安定性は低く空気中では12時間、日光下では1~3時間で失活し、規定塩素濃度を満たした一般の水道水中では20分で8割が失活する。ボツリヌス毒素は種類によってA~G型に分けられており、特にヒトへの病原性はA、B型が強い。

ボツリヌス菌(Clostridium botulinum):クロストリジウム属/偏性嫌気性菌/グラム陽性菌/有芽胞/杆菌

乳児ボツリヌス症の発症例

国内では1986年に初めて乳児ボツリヌス症が報告された。原因はハチミツであったため1987年に厚生省から注意喚起があり、乳児にハチミツを与える危険性が周知されるにしたがって1990年以降ハチミツが原因である症例は激減した。しかし、ハチミツ以外の食品等を原因とした報告例は年に1例程度ずつ増え2016年時点で32例が報告されている。

ボツリヌス菌の芽胞はわずかな塵などにも潜んでいるため、感染源が特定できない例が多い。判明している例では、自家製野菜スープによるものと、井戸水によるものが報告されている。

2017年には国内で初めて乳児ボツリヌス症での死亡例が発生した。加えてハチミツの摂取が原因だったため、改めて乳児にハチミツをあたえる危険性が周知されることとなった。

抗菌とは/抗菌方法の種類、抗菌の仕組み、抗菌試験と基準値

抗菌の辞書的な意味は、「細菌の増殖を抑制すること」であり、日常会話でも近い意味で使用されていると思われる。抗菌加工製品ガイドライン(H11年5月通産省)においても「抗菌加工製品における抗菌とは当該製品の表面における細菌の増殖を抑制すること」と定義されている。

ここでは、抗菌の工業的な基準をとりあげて、抗菌方法の種類抗菌の仕組みについて記述する。

抗菌製品の種類

抗菌加工製品(SIAAマーク)

繊維製品(SEKマーク)

抗菌製品は抗菌加工製品繊維製品に分けられる。分かりやすく言い換えれば、繊維以外の製品繊維製品である。それぞれ認定機関は異なっており、以下のように分けられる。

抗菌加工製品

  • 認定機関 :一般社団法人 抗菌製品技術協議会Society of Industrial Technology for Antimicrobial Articles(SIAA
  • 認定マーク:SIAAマーク
  • 試験方法 :JIS Z 2801 (=ISO22196)、JIS R 1702など(菌やウィルスなどの対象物や抗菌方法によって様々)
  • 試験場所 :JNLA取得の試験機関
  • 認定基準 :試験によるが抗菌活性値≧2.0など
  • 製品例  :家電製品、建材、塗料、バス・トイレ用品、キッチン用品、通信機器印刷物等

繊維製品

  • 認定機関 :一般社団法人 繊維評価技術協議会Japan Textile Evaluation Technology Council(JTETC、旧SEK)
  • 認定マーク:SEKマーク
  • 試験方法 :JIS L 1902、JIS R 1702など(菌やウィルスなどの対象物や抗菌方法によって様々)
  • 試験場所 :JNLA取得の試験機関
  • 認定基準 :試験によるが抗菌活性値≧2.0など
  • 製品例  :衣類、医療用ウェア等
用語
  • 抗菌活性値 抗菌活性値=2.0とは菌数(増殖率)を比較した時に、菌数(増殖率)が1/100であることを示す。これは常用対数で表しているためであり、抗菌活性値=3.0であれば菌数(増殖率)は1/1000となる。すなわち数値が高いほど抗菌効果が高いことを表す。
  • JNLAとは IAJapanによって運営されている産業標準化法試験事業者登録制度Japan National Laboratory Accreditation System)のこと。
IAJapanとはNITEの適合性認定分野を担当する認定センターInternational Accreditation Japan)のこと。
※NITEとは独立行政法人 製品評価技術基盤機構National Institute of Technology and Evaluation)のこと。

具体的な試験方法と基準値

SIAAとSEKには、細菌だけでなくウィルスに強い抗菌製品や、カビに強い抗菌製品に対するマークもあり、当然ながら試験方法や基準値は異なる。しかし、ここにすべて記述することはできないため代表的な試験法「JIS L 1902(ISO 20743)」を基に説明する。

JIS L 1902は全部で12種類あるSEKマークのうち、抗菌防臭加工、制菌加工(一般用途)、制菌加工(特定用途)の3種類のマークの認定試験として使われている。

JIS L 1902には、「菌液吸収法」「トランスファー法」「菌転写法」「ハロー法」の4つの試験方法が存在する。当該製品の抗菌加工や使用環境、表面特性などを考慮し、適切な方法を選ぶ。今回は「菌液吸収法」が適している。

また、SEKマークの種類によって試験に使用する菌種が以下のように決まっている。

  • 抗菌防臭加工黄色ぶどう球菌
  • 制菌加工(一般用途)黄色ぶどう球菌、肺炎杆菌大腸菌、緑膿菌、モラクセラ菌
  • 制菌加工(特定用途)黄色ぶどう球菌、肺炎杆菌、MRSA大腸菌、緑膿菌、モラクセラ菌

  は必須菌、  はオプション菌(オプション菌は、試験データの提出によりパンフレット等に記載できる菌である。)

まず、試験布と標準布それぞれに菌を接種し、18時間培養する。試験布と標準布それぞれの菌接種直後の菌数と18時間培養後の菌数を測定する。これらから以下の式により抗菌活性値Aが求められる

抗菌活性値 A=F - G
標準布の増殖値 F=logCt - logC0
試験布の増殖値 G=logTt - logT0
 logCt:18時間後の標準布の菌数の常用対数
 logC0:接種直後の標準布の菌数の常用対数
 logTt:18時間後の試験布の菌数の常用対数
 logT0:接種直後の試験布の菌数の常用対数

抗菌効果の基準は以下の通りである。SEKマークを表示できるのはSEKマーク繊維製品認証基準を満たしたものだけであるが、参考基準値としてJIS L 1902自体にも定められている。

SEKマーク繊維製品認証基準
 抗菌防臭加工
2.2≦A

 制菌加工(一般用途)※一般家庭・食品業務用
F≦A
 制菌加工(特定用途)※医療・介護用
F<A

抗菌効果基準値JIS L 1902 表F.1より引用)
2.0≦A<3.0 効果が認められる。
3.0≦A     強い効果が認められる。

SEKの制菌加工に関しては、基準が定数ではなくF<Aと示されている。一見分かりにくいが、これは試験布の増殖値Gが負の値を取ることと同義である。つまり言い換えれば、試験布での菌数の減少が条件である。通常、菌を増殖させないことが抗菌の条件だが、これはさらに減少させるためより強い抗菌効果があることが分かる。そのため制菌加工(特定用途)として医療・介護分野でのみ使用されている。

繰り返しになるが、抗菌活性値=2.0とは菌数(増殖率)を比較した時に、菌数(増殖率)が1/100であることを示す。これは常用対数で表しているためであり、抗菌活性値=3.0であれば菌数(増殖率)は1/1000となる。ちなみに抗菌活性値=2.2なら菌数(増殖率)は1/158である。

また、他にも例外や条件、菌の測定法や培養法、器具、温度、数値の丸め方なども細かくJIS L 1902に規定されている。詳しくは以下のHPをご覧いただきたい。

抗菌剤/抗菌方法の種類

  • 有機系 即効性に優れるが、抗菌持続性が低い。種類、作用が多岐にわたる。
  • 無機系 銀、銅、亜鉛などを要因として発生する活性酸素あるいはイオンが、菌細胞と反応することで菌を殺す。抗菌持続性が高い。
  • 光触媒 触媒として働くことで活性酸素を生成し、酸化力で菌を分解する。半永久的に使用可能。
  • ナノ構造 超微細突起で菌の細胞膜を破ることで菌を死滅させる。安全性が高い。

有機系抗菌剤の「抗菌の仕組み」

一般的に有機系抗菌剤は、即効性が高いが持続性が低く、抗菌スペクトルが狭いものが多い。

また、有機系抗菌剤は化学合成系天然物系に大別できる。化学合成系はコストパフォーマンスに優れ、天然物系は安全性が高いなど、それぞれに特徴がある。

有機系抗菌剤は水や有機溶媒に溶かし、対象物に噴霧や塗布することで使用する。天然物系に関しては、樹脂や繊維などに練りこまれた製品などもある。

化学合成系

化学合成系は種類が多く、微生物に対する作用ごとに以下のように分類できる。

  1. 微生物の生合成阻害
    • フェノール系、ピリジン系、トリアジン系
  2. 微生物のエネルギー獲得系の阻害
    • ニトリル系、チアゾール系
  3. 微生物のDNA、RNA、酵素等の損傷
    • アルコール系、アルデヒド系、ジスルフィド系
  4. 微生物の細胞構造の破壊
    • カルボン酸系、エステル系、エーテル系、四級アンモニウム塩系

天然物系

キトサン、カテキン、ヒノキチオールなどが知られている。

キトサンは酸性溶液中で陽イオン性を示すという、天然では珍しい特徴をもっており、菌の細胞壁の陰イオン性成分と結合するため細胞内物質が漏洩し菌を死なせる効果を持つ。

カテキンはフェノール(−OHが結合した芳香環)を多数持つポリフェノールであり、抗菌作用はじめ多くの機能性を持っている。しかし、抗菌作用に関しては菌の細胞膜を破壊するため菌が死ぬということは分かっているが詳細なメカニズムは解明されていない。

ヒノキチオールも詳細なメカニズムは解明されていないが、多くの生理作用や抗菌作用があることが分かっている。抗菌スペクトルが広いのが特徴である。

無機系抗菌剤の 「抗菌の仕組み」

一般的に無機系抗菌剤は、即効性が低いが持続性が高く、抗菌スペクトルが広いものが多い。また熱安定性が高いため、調理器具などにも用いられている。主に銀、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルなどが抗菌剤として使われる。無機系抗菌剤は基本的に担体(金属、セラミックス、ゼオライト等)に保持させることで利用される。

金属によって菌が死滅する仕組みの基本的なものは、金属イオンによるものである。金属イオンは、タンパク質と結合しやすい特徴をもつことから、まず菌表面に結合し、その後内部に入り、タンパク質酵素のチオール基(-SH)などに反応することで代謝反応阻害を起こし、菌を死滅させる。

また、金属(主に銀)が触媒となり発生する活性酸素種による抗菌効果も報告されている。活性酸素種は、強い酸化力をもっているため、菌を酸化し、分解、変性し死滅させる。活性酸素種は後述する光触媒によっても発生する。

光触媒の 「抗菌の仕組み」

光触媒には酸化チタンや酸化タングステンなどがあるが、ほとんどの製品には酸化チタンが使用されており、壁やガラスなどの表面にコーティングされて使用される。酸化チタンは波長が380nm未満の光、つまり紫外線があたることでスーパーオキサイドアニオンとヒドロキシラジカルという非常に酸化力の強い物質を生成する。それらは菌や有機物などを強い酸化力で二酸化炭素や水に分解し無害化する。これが菌や汚れを防ぐ光触媒の仕組みである。

用語
  • 触媒 化学反応の手助けをするが、反応の前後で自身は変化しない物質。
  • 酸化チタン(Ⅳ) (=二酸化チタン(TiO2))。Tiは+4価が最も安定。
  • スーパーオキサイドアニオン(O2) 活性酸素の一つ。フリーラジカル(不対電子をもつ物質)のため反応性に富む。
  • ヒドロキシラジカル(•OH) 活性酸素の一つ。名前通りフリーラジカルであり、活性酸素のなかで最も酸化力が強い。記号ビュレット(•)は不対電子を表す。

なぜ酸化チタンがO2と•OHを生み出すのか?

これを説明するためにはまず半導体について説明しなければならない。金属酸化物は一般的に絶縁体であるが、半導体の性質をもつものも比較的多く酸化チタンもその一つであるためである。

半導体の性質

半導体は温度が上がると、電気伝導性が増すという性質がある。

量子力学によると、電子はエネルギー準位が飛び飛びの値をとるため、電子軌道も飛び飛びで存在する。しかし、価電子の場合、隣接する原子の影響でとりうるエネルギーに幅ができるため存在位置にも幅ができる。この価電子が存在する幅をもった範囲を価電子帯という。価電子に熱などのエネルギーを加えると、より高い位置にある伝導帯に励起(移動)し自由電子となる。電子が抜けた分、価電子帯には正孔が生じ正の荷電粒子としてふるまい、移動度は劣るが自由電子と同様に電気伝導性を生む。これが半導体に熱を与えると電気伝導性が増す原理である。ちなみに価電子帯と伝導帯のエネルギー差をバンドギャップEgといい、その値が大きいと絶縁体と呼ばれるが、半導体と絶縁体の明確な境界はない。

以上が半導体の説明であるが、酸化チタンは他の半導体とは少し違ったふるまいをするため光触媒という特殊な機能をもっている。半導体は紫外線などの光エネルギーを与えられると電子が励起し自由電子正孔を生じる。通常は電子と正孔が打ち消しあい熱エネルギーに変わるだけだが、酸化チタンの場合、空気中の酸素と水に反応しスーパーオキサイドアニオンO2ヒドロキシラジカル•OHを生み出す。酸素O2は電子により還元されO2を生成し、水に含まれる水酸化物イオンOH-は酸化され•OHを生成する。これが酸化チタンが強力な酸化力を持つ物質を生み出す仕組みである。

用語
  • 価電子 最外殻に存在する電子。
  • 価電子帯 価電子が存在できる範囲。
  • 伝導帯 自由電子が存在できる範囲。
  • 正孔 正の荷電粒子としてふるまう、電子が不足した孔。
  • 酸化 酸素を得ること。水素を失うこと。電子を失うこと。
  • 還元 酸素を失うこと。水素を得ること。電子を得ること。

光触媒は消耗する?寿命は?

酸化チタンは触媒がゆえに自身は消耗しなく、寿命は半永久的である。詳しくはカルテックのHPをご覧いただきたい。

FAQ よくあるご質問|光触媒 除菌・脱臭デバイス/ターンド・ケイ[TURNED K]|カルテック株式会社

ナノ構造の 「抗菌の仕組み」

ナノ構造による抗菌は、一般的な化学的作用による抗菌剤と異なり、物理的作用で抗菌作用を示す。

無数の超微細突起(高さ数百nm)を林立させた物体表面に菌が触れると、細胞膜が破れ細胞内物質が漏洩し死滅する仕組みである。

これはセミやトンボの羽の表面ナノ構造の再現により得られた技術である。もともとセミやトンボの羽に菌が繁殖しにくく、超微細突起が林立していることから発見された。セミの場合、超微細突起は高さ約200nm、太さ約150nm、間隔約200nmで存在している。より抗菌効果の高い突起サイズや、より実用的な突起加工方法が研究されている。

また、一般的な抗菌剤よりも安全性が高いため、幅広い分野で使用可能だと思われる。

GI値とGL値の違い/GI値のデメリットとGL値のメリット

GI値(Glycemic Index)とは

血糖値の上昇のしやすさの目安となる指数です。値は0~100を取り、高いほど血糖値が上がりやすい傾向があります。

GI値が70以上を高GI食品、56~69を中GI食品、55以下を低GI食品と定められています。例えば、食パンはGI値95で高GI食品に分類され、リンゴは36で低GI食品に分類されます。

血糖値が高くなるとインスリンが分泌され脂肪の吸収を促進してしまうため、血糖値が高くなりにくい低GI食品が肥満予防の観点から注目されています。

低GI食品を食べてから高GI食品を食べると血糖値上昇が抑えられる効果があります。そのため、GI値を気にして高GIのパンから低GIの蕎麦に代えるのも良いですが、パンを食べる前に低GIである脂質や野菜を摂るのも効果的です。

GI値の算出の仕方

GI値はグルコースの血糖上昇曲線下面積Aと検査食品の血糖上昇曲線下面積Bの比率によって決まります。式で表すと以下のようになります。

GI値=(B/A)×100

血糖値は実際にグルコースや検査食品を摂取してもらい計測します。検査食品の摂取量は炭水化物の含有率から計算し、炭水化物が50gになるように摂取量を調整します。摂取後120分間の血糖値を測定し、血糖上昇曲線下面積を求め、GI値を算出します。

GI値の欠点

  1. 必ずしも低GI食品が血糖値の上昇が穏やかであるとは限らない点

GI値の算出に血糖値の上昇速度は考慮されていないためGI値=血糖値上昇速度というのは正しくありません。ただしGI値が高いと血糖値上昇速度も高くなるという傾向があるため、目安としてなら使える指数であるということです。

実際の数値ではありませんが、極端な例として上記のような2つの血糖曲線を作成しました。これを使って血糖上昇曲線下面積を出しGI値を求めると、両者とも面積が同じためGI値も等しくなります。すなわちGI値は血糖値上昇速度とは直接の関係がないことが分かります。

  1. GI値は炭水化物50gあたりで計算するため、食品によっては実用的な値からは遠くなる点

炭水化物含有率が少ない食物の場合、摂取量が大量になるという欠点があります。例えばニンジンで炭水化物を50g摂取するにはおおよそ580gも摂取する必要があります。GI値はこの状況で算出されるため実用的とはいえない値となってしまいます。この欠点を解消したのがGL値という指数です。

GI値に差が出る理由

血糖値というのは血液中のグルコース(ブドウ糖)の濃度です。そのためグルコースを多く含む食物ほど血液中にグルコースが溶けやすく、血糖値は上がりやすい傾向にあります。

GL値(Glycemic Load)とは

グリセミック負荷とも言い、GI値に1食分の概念を加えることでGI値の欠点を解消した指数です。以下の公式で導けます。

GL値 = 対象食品1食分に含まれる炭水化物量[g] × GI値 ÷ 100

例えば、食パンの場合、GI値は95、1食分に含まれる炭水化物は28g(1食分を60gとした場合)であるから以下のように計算すると、GL値は27となります。

28g × 95 ÷ 100 = 27

GL値の高低の判断基準は以下が目安です。

低GL=0~10。中GL=11~20。高GL=21~100。

食パンのGL値は27で高GLとなりましたが、1食分の設定値が変われば、GL値も変わってきます。一食分を半分の30gに設定すればGL値も半分の13.5となり、中GLとなります。GL値を見るときは、一食分の摂取量にも着目すべきでしょう。

高GLの範囲が大きいことに疑問を持つ人もいるかもしれませんが、一般的な食品であれば高いものでもGL値は60前後です。例えば、ぶどう糖の塊を100g摂取したりしない限りGL値は100になりません。

まとめ

  • 低GI食品は血糖値の上昇が穏やかで、腹持ちが良い傾向がある。
  • 低GI食品を先に摂取すると、高GI食品の血糖値の上昇も穏やかになる。
  • GL値とは、一食あたりの血糖値上昇の程度を表すためGI値よりも実用的な値である。

機能性オリゴ糖の効果や特徴/9種類のオリゴ糖を比較

機能性オリゴ糖とは

オリゴ糖(少糖類)とは単糖が2~10個程度結合したものを指し、それ以上のものは多糖類と言います。10個程度というのは目安であり、明確な定義はありません。オリゴ糖の内、単糖の結合の個数によってさらに二糖、三糖、四糖……のように分類されます。

単糖<オリゴ糖(二糖、三糖、四糖……)<多糖

オリゴ糖の種類は数え切れないほど沢山存在しますが、整腸作用等様々な機能があるものを特に“機能性”オリゴ糖と呼びます。ここでは一般に利用されている機能性オリゴ糖を9種類紹介します。

難消化性エネルギー抗う蝕性甘味度
フルクトオリゴ糖2kcal/g30~60
乳果オリゴ糖2kcal/g30
大豆オリゴ糖2kcal/g20~30
ガラクトオリゴ糖2kcal/g20~40
イソマルトオリゴ糖4kcal/g40~50
キシロオリゴ糖2kcal/g30~40
イソマルツロース4kcal/g42
ニゲロオリゴ糖×4kcal/g45
ゲンチオオリゴ糖2kcal/g×苦味

難消化性とは

ヒトの消化器官で分解されにくい性質のことで、大腸まで分解されずに運ばれる特徴があります。いくつかのオリゴ糖は善玉菌(ビフィズス菌等)の栄養源となるため、善玉菌を増やし腸内を酸性に傾ける性質があります。腸内が酸性だと腸内フローラバランスが整っている状態です。酸性に傾くことで、カルシウムなどのミネラルが溶けやすくなり、ミネラル吸収率を高めることができます。

一般的な炭水化物(糖類)は体内で4kcal/gのエネルギーとして吸収されますが、難消化性のオリゴ糖は大腸で半分ほどが菌に分解され、残りはそのまま排出されます。そのため半分ほどの2kcal/g程度しかエネルギーとして吸収されません。

さらにオリゴ糖自体のカロリーが少ないだけでなく、難消化性という性質がもう一つのダイエット効果を生み出します。難消化性のオリゴ糖は水溶性の食物繊維と似た性質を持ち合わせており、完全に分解されずに運ばれるため、一緒に摂った食物に対し障害物のような役割をして吸収を遅らせ、血糖値の上昇を抑える効果や、脂質の吸収を抑える効果もあります。このようなダイエット効果がある一方で、一度に多量に摂取するとミネラルの吸収を阻害してしまったり、下痢を引き起こす可能性もあるので注意が必要です。

抗う蝕性とは

簡単に言えば、虫歯になりにくい性質のことです。虫歯は次の2つの要因によって発生します。1つ目はミュータンス菌がグルコースから作り出し歯垢の元にもなるグルカンです。2つ目は無数の常在菌がグルコースやフルクトースから作る酸です。グルカンには酸や菌が溜まりやすいため、グルカンがあることでより酸性が強まり歯が溶けて虫歯になります。

よって、餌となるグルコースやフルクトースがなければ、虫歯の原因にはなりません。抗う蝕性のオリゴ糖は唾液や菌に分解されないため、グルコースやフルクトースのような単糖が現れず、虫歯の原因にはならないのです。

1.フラクトオリゴ糖

機能

  • 難消化性
  • 低カロリー(2kcal/g)
  • 脂質吸収抑制効果
  • 腸内環境を整える
  • 抗う蝕性
  • 特定保健用食品(ビフィズス菌を増やしておなかの調子を整える効果)
  • 甘味度30~60(ショ糖100に対し)

特徴

  • 構造
    • スクロースにフルクトースが1~3個結合
  • 種類
    • ケストース(三糖)
    • ニストース(四糖)
    • フラクトフラノシルニストース(五糖)などが存在。

2.乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)

機能

  • 難消化性
  • 低カロリー(2kcal/g)
  • 腸内環境を整える
  • 抗う蝕性
  • 特定保健用食品(ビフィズス菌を増やしておなかの調子を整える効果)
  • 甘味度30(ショ糖100に対し)

特徴

  • 構造
    • ラクトースにフルクトースが結合した三糖
    • ラクトースとスクロース両方の構造を持つ
  • ラクトースとスクロースに酵素を作用させ作る

3.大豆オリゴ糖

機能

  • 難消化性
  • 低カロリー(2kcal/g)
  • 腸内環境を整える
  • 抗う蝕性
  • 特定保健用食品(ビフィズス菌を増やしておなかの調子を整える効果)
  • 甘味度20~30(ショ糖100に対し)

特徴

  • 構造
    • スクロースにガラクトースが1~2個結合(α1,6結合)
  • 種類
    • ラフィノース(三糖)
    • スタキオース(四糖)
  • 含まれる食物
    • 大豆、ビート、キャベツ、ブロッコリー、アスパラガス

4.ガラクトオリゴ糖

機能

  • 低カロリー(2kcal/g)
  • 腸内環境を整える
  • 抗う蝕性
  • 特定保健用食品(ビフィズス菌を増やしておなかの調子を整える効果)
  • 甘味度20~40(ショ糖100に対し)

特徴

  • ミルクオリゴ糖の一種
  • 熱や酸に強い
  • 構造
    • ラクトースにガラクトースが1~4個結合
  • 含まれる食物
    • 哺乳類の乳汁

5.イソマルトオリゴ糖(分岐オリゴ糖)

機能

  • 中程度の消化性
  • 4kcal/g
  • 腸内環境を整える
  • 特定保健用食品(ビフィズス菌を増やしておなかの調子を整える効果)
  • 甘味度40~50(ショ糖100に対し)
  • 熱や酸に強い

特徴

  • 構造
    • グルコースが2~3個結合
  • 種類
    • イソマルトース(二糖)
    • イソマルトトリオース(三糖)(直鎖型)
    • パノース(三糖)(分岐型)

6.キシロオリゴ糖

機能

  • 難消化性
  • 低カロリー(2kcal/g)
  • 抗う蝕性
  • 腸内環境を整える
  • 血糖値の上昇を抑える効果(キシロースが糖分解酵素を抑制するため)
  • 特定保健用食品(ビフィズス菌を増やしておなかの調子を整える効果)
  • 甘味度30~40(ショ糖100に対し)
  • 熱や酸に強い

特徴

  • 工業的にはキシラン(多糖類)から製造される
  • キシリトールの原料
  • 構造
    • 単糖のキシロースが2~20個結合(β1,4結合)
  • 種類
    • キシロビオース(二糖)
    • キシロトリオース(三糖)
    • ……
  • 含まれる食物
    • タケノコ、キノコ

7.イソマルツロース(パラチノース)

機能

  • 4kcal/g
  • 抗う蝕性
  • 機能性表示食品(血糖値の上昇を抑える機能)
  • 脂肪の蓄積の抑制と燃焼の促進(インクレチンの分泌を抑制するため)
  • 脳へのグルコース供給を長時間保つ
  • 甘味度42(ショ糖100に対し)

特徴

  • 工業的にはグルコースとフルクトースが結合したスクロースに酵素を作用させ結合の位置をα-1,2からα-1,6に転移させることで作る
  • 別名パラチノースは三井製糖の商標であり、転移酵素発見地のドイツの地名Palatinateに由来する
  • 構造
    • グルコースとフルクトースが結合した二糖(α-1,6結合)
  • 含まれる食物
    • ハチミツ

8.ニゲロオリゴ糖

機能

  • 4kcal/g
  • 抗う蝕性
  • 免疫賦活効果
  • 甘味度45(ショ糖100に対し)

特徴

  • 構造
    • グルコースが2~4個結合
  • 種類
    • ニゲロース(二糖)(α-1,3結合)
    • ニゲロシルグルコース(三糖)(α-1,3とα-1,4結合)
    • ニゲロシルマルトース(四糖)(α-1,3とα-1,4結合)
  • 含まれる食物
    • 清酒、みりん、味噌、はちみつ、ビール
  • 酒から発見されたためサケビオースとも呼ばれる。

9.ゲンチオオリゴ糖

機能

  • 難消化性
  • 低カロリー(2kcal/g)
  • 腸内環境を整える
  • 甘味はなく苦味を持つ

特徴

  • 構造
    • グルコースが2~10個結合(β-1,6結合)
  • 種類
    • ゲンチオビオース(二糖)
    • ゲンチオトリオース(三糖)
    • ゲンチオテトラオース(四糖)
  • 含まれる食物
    • リンドウ、はちみつ
  • ゲンチオはリンドウの学名(Gentiana)に由来する。

グルテンとは?グルテンフリーの定義について

グルテンとは

小麦粉に含まれるグリアジングルテニンというタンパク質に水を加え、さらに混捏(こんねつ)してできるものです。

つまり、小麦粉を水で練るとできます。

小麦粉の10~15%はタンパク質です。タンパク質の内50%弱をグリアジンが、40%弱をグルテニンが占めます。残り10数%をロイコシンやアミラーゼなど数種類が占めます。

グリアジンは弾力はないが伸びやすい性質を持っています。

グルテニンは弾力は強いが伸びにくい性質を持っています。

この2つと水を混捏(こんねつ)することで、互いの性質を補い合い、弾力と伸張性を兼ね備えたグルテンというタンパク質が生まれます。

グルテンは共有結合・イオン結合・水素結合を形成し、複雑な構造を形作っています。その中でも最も強い結合が共有結合であるジスルフィド結合(S-S結合)です。グルテンにはシステインなどの含硫アミノ酸を含んでおり、システインの持つチオール基(-SH)同士が結合しジスルフィド結合を形成しています。

グルテンの簡易モデルを表したのが下の画像です。網目状のグルテニングリアジンの粒が絡まっているイメージです。

また、薄力粉が強力粉よりも弾粘性が弱いのは、タンパク質であるグルテンの含有割合が低いためです。

構造緩和とは

小麦粉と水を混捏(こんねつ)後、時間が経過するにつれて生地が柔らかく伸ばしやすくなる現象を構造緩和と言います。これは小麦粉に含まれる酵素(アミラーゼ)が化学変化を促し、グルテンのジスルフィド結合を分解し、且つデンプンなどの多糖を高分子から低分子に変えることで柔軟性が向上するためだと考えられています。

菓子の生地などを寝かせる意味の一つは、この構造緩和による柔軟性の向上を期待してのことです。

グルテンを含む食材

グルテニンは小麦だけでなく大麦、ライ麦などにも含まれていますが、グリアジンは小麦にのみ含まれています。グルテニングリアジンが揃わないとグルテンは形成されないため、小麦以外にはグルテンは含まれていません。

しかし、製造過程で小麦が他の製品に混入する可能性もあります。例えば小麦と大麦が同じ工場で製造されている場合、大麦に小麦が混ざり大麦にごく微量のグルテンが含まれる可能性があります。健康な人であれば、全く問題になりませんがグルテン関連障害を持つ方は微量でも命にかかわる危険性があるため、一定基準を満たしたグルテンフリー表示がある製品が求められています。

グルテンが含まれる可能性があるものには以下のようなものがあります。

パン、ケーキ、ピザ、ラーメン、うどん、麦茶、ビール、醤油、等の小麦粉を使用したもの

グルテンフリーの定義

グルテン関連障害(セリアック病、小麦アレルギー、など)を持つ方の中には、グルテンだけでなく大麦、ライ麦、オーツ麦に含まれるタンパク質からも悪影響を受ける方もいます。

ホルデイン、セカリン、アベニン(それぞれ大麦、ライ麦、オーツ麦に含まれるタンパク質)はグルテンの前物質であるグリアジンに似たアミノ酸配列を持っており、人によっては抗原になり得ます。

そういった背景もあり、コーデックス委員会では、小麦だけでなく、大麦、ライ麦、オーツ麦由来のタンパク質含有量が20ppm(20mg/kg)未満のものをグルテンフリー表示可能と定めています。

日本では、グルテンフリーの定義は定めていませんが、小麦タンパク質が10ppm以上含まれる場合は、小麦アレルギー表示が義務付けられているため、グルテン含有の判断は可能です。しかし、大麦やライ麦などには表示義務はありません。

また、日本の米粉製品に関しては、日本米粉協会がグルテン含有量1ppm以下という厳しい基準を満たしたものに、ノングルテン表示を行っています。

参照

米粉の用途別基準/米粉製品の普及のための表示に関するガイドラインについて:農林水産省

栄養強調表示とは?種類・具体例・誤認しやすい表現とは?

栄養強調表示とは、ある栄養素が多いことをアピールしたり、あるいは少ないことをアピールしたりする下記のような表示のことで、法令によって定められた基準を満たさないと表示することはできません。

例:ビタミン含有、高タンパク、低脂質、ゼロカロリー、など

背景

食品表示法第4条に内閣府が農林水産大臣、厚生労働大臣、財務大臣、消費者委員会と協議し、食品表示基準を定めることと、あるとおり食品表示法の施行日と同日2015年4月1日に、内閣府令として食品表示基準が施行されました。

食品表示法食品衛生法JAS法健康増進法が一元化されできたものであり、元々、栄養強調表示は健康増進法で定められていましたが、

食品表示法施行後は、食品表示基準第7条、別表第12、13に栄養強調表示について載っています。

栄養強調表示の種類

栄養強調表示には、

高い旨、含む旨、強化された旨

低い旨、含まない旨、低減された旨

の6項目のそれぞれに表示基準が定められており、

高い旨、含む旨、強化された旨に関しては、たんぱく質、食物繊維、亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、マグネシウム、ビタミン(全13種)の20項目に基準値が定められています。

低い旨、含まない旨、低減された旨に関しては、熱量、脂質、飽和脂肪酸、コレステロール、糖類、ナトリウムの6項目に基準値が定められています。

強調表示の具体例

高い旨の表示

例:ビタミンC豊富、高タンパク など

ビタミンCの場合、100gあたり30mg(飲料の場合100mlあたり15mg)、100kcalあたり10mgのどちらかの基準を満たせば高い旨を表示できます。

含む旨の表示

例:ビタミンC含有、ミネラル補給 など

ビタミンCの場合、100gあたり15mg(飲料の場合100mlあたり7.5mg)、100kcalあたり5mgのどちらかの基準を満たせば含む旨を表示できます。

強化された旨の表示

例:従来品AよりビタミンC2倍、カルシウム30%増強 など

表示するには、比較対象の食品が特定できるように表示し、強化量又は割合を表示し、絶対量の基準値を満たせば強化された旨を表示できます。

基準値は、ビタミンCの場合、100gあたり10mg(飲料の場合100mlあたり10mg)です。

含まない旨の表示

例:無脂肪、ノンシュガー、ゼロカロリー など

脂質の場合、100gあたり0.5g(飲料の場合100mlあたり0.5g)以下であれば含まない旨を表示できます。

低い旨の表示

例:低脂肪、微糖、塩分控えめ など

脂質の場合、100gあたり3g(飲料の場合100mlあたり1.5g)以下であれば低い旨を表示できます。

低減された旨の表示

例:従来品Aより脂肪分30%カット、カロリー1/2 など

表示するには、比較対象の食品が特定できるように表示し、低減量又は割合を表示し、低減割合25%以上を満たし、絶対量の基準値以下であれば低減された旨を表示できます。

基準値は、脂質の場合、100gあたり3g(飲料の場合100mlあたり1.5g)です。

消費者が誤認しやすい表現

“甘さ控えめ”、”うす塩味”などの表現は味覚という主観的感覚のため基準や制限なく使用できる表示です。

“砂糖不使用”という表示は砂糖(=スクロース)を使用していないだけで他の糖類は使用している場合でも表示可能です。

ノンシュガーとシュガーレスの違い

結論から言うと、ノンシュガーとシュガーレスに違いはありません。昔は定義が異なっていましたが現在は同じ意味です。

ノンシュガーとシュガーレスは普通に考えれば砂糖が入っていないという意味だと推測できますが、実際は糖類が基準値(糖類が100gあたり0.5g以下※1)を満たさなければ名乗ることができません。すなわち、定義上は、無糖も、糖類ゼロもノンシュガーもシュガーレスもすべて同じです。

※1 飲料の場合は100mlあたり0.5g