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機能性オリゴ糖とは
オリゴ糖(少糖類)とは単糖が2~10個程度結合したものを指し、それ以上のものは多糖類と言います。10個程度というのは目安であり、明確な定義はありません。オリゴ糖の内、単糖の結合の個数によってさらに二糖、三糖、四糖……のように分類されます。
単糖<オリゴ糖(二糖、三糖、四糖……)<多糖
オリゴ糖の種類は数え切れないほど沢山存在しますが、整腸作用等様々な機能があるものを特に“機能性”オリゴ糖と呼びます。ここでは一般に利用されている機能性オリゴ糖を9種類紹介します。
難消化性 | エネルギー | 抗う蝕性 | 甘味度 | |
---|---|---|---|---|
フルクトオリゴ糖 | 〇 | 2kcal/g | 〇 | 30~60 |
乳果オリゴ糖 | 〇 | 2kcal/g | △ | 30 |
大豆オリゴ糖 | 〇 | 2kcal/g | 〇 | 20~30 |
ガラクトオリゴ糖 | 〇 | 2kcal/g | 〇 | 20~40 |
イソマルトオリゴ糖 | 〇 | 4kcal/g | 〇 | 40~50 |
キシロオリゴ糖 | 〇 | 2kcal/g | 〇 | 30~40 |
イソマルツロース | △ | 4kcal/g | 〇 | 42 |
ニゲロオリゴ糖 | × | 4kcal/g | 〇 | 45 |
ゲンチオオリゴ糖 | 〇 | 2kcal/g | × | 苦味 |
難消化性とは
ヒトの消化器官で分解されにくい性質のことで、大腸まで分解されずに運ばれる特徴があります。いくつかのオリゴ糖は善玉菌(ビフィズス菌等)の栄養源となるため、善玉菌を増やし腸内を酸性に傾ける性質があります。腸内が酸性だと腸内フローラバランスが整っている状態です。酸性に傾くことで、カルシウムなどのミネラルが溶けやすくなり、ミネラル吸収率を高めることができます。
一般的な炭水化物(糖類)は体内で4kcal/gのエネルギーとして吸収されますが、難消化性のオリゴ糖は大腸で半分ほどが菌に分解され、残りはそのまま排出されます。そのため半分ほどの2kcal/g程度しかエネルギーとして吸収されません。
さらにオリゴ糖自体のカロリーが少ないだけでなく、難消化性という性質がもう一つのダイエット効果を生み出します。難消化性のオリゴ糖は水溶性の食物繊維と似た性質を持ち合わせており、完全に分解されずに運ばれるため、一緒に摂った食物に対し障害物のような役割をして吸収を遅らせ、血糖値の上昇を抑える効果や、脂質の吸収を抑える効果もあります。このようなダイエット効果がある一方で、一度に多量に摂取するとミネラルの吸収を阻害してしまったり、下痢を引き起こす可能性もあるので注意が必要です。
抗う蝕性とは
簡単に言えば、虫歯になりにくい性質のことです。虫歯は次の2つの要因によって発生します。1つ目はミュータンス菌がグルコースから作り出し歯垢の元にもなるグルカンです。2つ目は無数の常在菌がグルコースやフルクトースから作る酸です。グルカンには酸や菌が溜まりやすいため、グルカンがあることでより酸性が強まり歯が溶けて虫歯になります。
よって、餌となるグルコースやフルクトースがなければ、虫歯の原因にはなりません。抗う蝕性のオリゴ糖は唾液や菌に分解されないため、グルコースやフルクトースのような単糖が現れず、虫歯の原因にはならないのです。
1.フラクトオリゴ糖
機能
- 難消化性
- 低カロリー(2kcal/g)
- 脂質吸収抑制効果
- 腸内環境を整える
- 抗う蝕性
- 特定保健用食品(ビフィズス菌を増やしておなかの調子を整える効果)
- 甘味度30~60(ショ糖100に対し)
特徴
- 構造
- スクロースにフルクトースが1~3個結合
- 種類
- ケストース(三糖)
- ニストース(四糖)
- フラクトフラノシルニストース(五糖)などが存在。
2.乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)
機能
- 難消化性
- 低カロリー(2kcal/g)
- 腸内環境を整える
- 抗う蝕性
- 特定保健用食品(ビフィズス菌を増やしておなかの調子を整える効果)
- 甘味度30(ショ糖100に対し)
特徴
- 構造
- ラクトースにフルクトースが結合した三糖
- ラクトースとスクロース両方の構造を持つ
- ラクトースとスクロースに酵素を作用させ作る
3.大豆オリゴ糖
機能
- 難消化性
- 低カロリー(2kcal/g)
- 腸内環境を整える
- 抗う蝕性
- 特定保健用食品(ビフィズス菌を増やしておなかの調子を整える効果)
- 甘味度20~30(ショ糖100に対し)
特徴
- 構造
- スクロースにガラクトースが1~2個結合(α1,6結合)
- 種類
- ラフィノース(三糖)
- スタキオース(四糖)
- 含まれる食物
- 大豆、ビート、キャベツ、ブロッコリー、アスパラガス
4.ガラクトオリゴ糖
機能
- 低カロリー(2kcal/g)
- 腸内環境を整える
- 抗う蝕性
- 特定保健用食品(ビフィズス菌を増やしておなかの調子を整える効果)
- 甘味度20~40(ショ糖100に対し)
特徴
- ミルクオリゴ糖の一種
- 熱や酸に強い
- 構造
- ラクトースにガラクトースが1~4個結合
- 含まれる食物
- 哺乳類の乳汁
5.イソマルトオリゴ糖(分岐オリゴ糖)
機能
- 中程度の消化性
- 4kcal/g
- 腸内環境を整える
- 特定保健用食品(ビフィズス菌を増やしておなかの調子を整える効果)
- 甘味度40~50(ショ糖100に対し)
- 熱や酸に強い
特徴
- 構造
- グルコースが2~3個結合
- 種類
- イソマルトース(二糖)
- イソマルトトリオース(三糖)(直鎖型)
- パノース(三糖)(分岐型)
6.キシロオリゴ糖
機能
- 難消化性
- 低カロリー(2kcal/g)
- 抗う蝕性
- 腸内環境を整える
- 血糖値の上昇を抑える効果(キシロースが糖分解酵素を抑制するため)
- 特定保健用食品(ビフィズス菌を増やしておなかの調子を整える効果)
- 甘味度30~40(ショ糖100に対し)
- 熱や酸に強い
特徴
- 工業的にはキシラン(多糖類)から製造される
- キシリトールの原料
- 構造
- 単糖のキシロースが2~20個結合(β1,4結合)
- 種類
- キシロビオース(二糖)
- キシロトリオース(三糖)
- ……
- 含まれる食物
- タケノコ、キノコ
7.イソマルツロース(パラチノース)
機能
- 4kcal/g
- 抗う蝕性
- 機能性表示食品(血糖値の上昇を抑える機能)
- 脂肪の蓄積の抑制と燃焼の促進(インクレチンの分泌を抑制するため)
- 脳へのグルコース供給を長時間保つ
- 甘味度42(ショ糖100に対し)
特徴
- 工業的にはグルコースとフルクトースが結合したスクロースに酵素を作用させ結合の位置をα-1,2からα-1,6に転移させることで作る
- 別名パラチノースは三井製糖の商標であり、転移酵素発見地のドイツの地名Palatinateに由来する
- 構造
- グルコースとフルクトースが結合した二糖(α-1,6結合)
- 含まれる食物
- ハチミツ
8.ニゲロオリゴ糖
機能
- 4kcal/g
- 抗う蝕性
- 免疫賦活効果
- 甘味度45(ショ糖100に対し)
特徴
- 構造
- グルコースが2~4個結合
- 種類
- ニゲロース(二糖)(α-1,3結合)
- ニゲロシルグルコース(三糖)(α-1,3とα-1,4結合)
- ニゲロシルマルトース(四糖)(α-1,3とα-1,4結合)
- 含まれる食物
- 清酒、みりん、味噌、はちみつ、ビール
- 酒から発見されたためサケビオースとも呼ばれる。
9.ゲンチオオリゴ糖
機能
- 難消化性
- 低カロリー(2kcal/g)
- 腸内環境を整える
- 甘味はなく苦味を持つ
特徴
- 構造
- グルコースが2~10個結合(β-1,6結合)
- 種類
- ゲンチオビオース(二糖)
- ゲンチオトリオース(三糖)
- ゲンチオテトラオース(四糖)
- 含まれる食物
- リンドウ、はちみつ
- ゲンチオはリンドウの学名(Gentiana)に由来する。